平成28年6月 第二回定例会 区長所信表明
ページ番号:580-304-950
更新日:2016年6月2日
はじめに
前川区長所信表明の様子
平成28年第二回練馬区議会定例会の開会に当たり、区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思います。
4月に発生した「平成28年熊本地震」では、最大震度7の大規模地震が2回起こり、大きな被害をもたらしました。犠牲となられた方々に、哀悼の意を表しますとともに、未だに深刻な状況が続いている被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
練馬区では、直ちに毛布3,000枚を熊本市にお届けしました。その後は、被災自治体の要請に応じて、被災建築物や土地の応急危険度判定員、罹災証明書の発行や福祉相談などの事務に従事する職員を派遣しています。一日も早い復旧・復興を願い、引き続き積極的に支援活動を行ってまいります。
東京では、首都直下地震の発生が切迫しています。区民の皆様には、家具の転倒防止、水や食料の備蓄、家族との連絡方法の確認など、日頃の備えに万全を期していただきたいと思います。地震発生時には、まず、身の安全を守ったうえで、隣近所での助け合い、安否確認、初期消火、救出・救護に努めてください。こうした取組が被害を軽減させます。区民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
区政改革
次に、区政改革についてです。
「みどりの風吹くまちビジョン」に掲げた政策を実現する仕組みや態勢を、区民の視点から見直し向上させるため、昨年6月区政改革推進会議を設置して検討を進めてきました。12回にわたる熱のこもった議論を経て、本年3月、提言をいただきました。
提言は、区民参加と協働を基本理念に、多岐にわたり具体的な課題を取り上げた示唆に富むものであります。中でも心に響いたのは、「練馬区を育て、創っていくのは区民自身です。」「区民が区を育てる。」という言葉です。
推進会議の提言を根幹に、広範な区民の皆様から寄せられたご意見やアイデアを活かして、区政改革計画素案を策定し、先月公表いたしました。
素案ではまず、人口の減少、高齢化・少子化の急速な進展、更には世界経済における地位の低下など、我が国の現状について認識を示しました。
こうしたモデルなき未知の時代にあって、練馬区は、膨大な医療・介護需要、増大する子育て支援のニーズに加えて、都市計画道路の整備の遅れ、鉄道空白地域の存在など区特有の課題という、大きな二つの困難に直面しています。練馬区が有する可能性を最大限に引き出し、後世に誇れるまちを築くためには、今、徹底した区政改革を実行しなければならないと考えます。
区政改革の目的は、区民サービスを充実し向上することにあります。公共サービスのあり方を根本から見直し、時代の状況と地域の実態に即したものにしていかなければなりません。同時に、厳しい財政状況にあっても、持続可能な仕組みをつくる必要があります。将来を見通した観点から施策の質や方向性を検証し、大きく3つの方策に区分して、16の具体的な取組を示しました。
今後、私自身が、未来を語る会や地域の集会で区民の皆様のご意見を直接伺い、区議会でのご議論を踏まえて、10月に成案化する考えです。
区政改革計画の取組は次期アクションプランに反映し、財政の見通しを示します。また、今後策定する公共施設等総合管理計画、人事戦略、定数管理計画などのなかで詳細な内容を明らかにします。
待機児童対策
次に、保育所と学童クラブの待機児童対策についてです。
私は区長就任以来、子育ての支援を区の重要政策のトップに掲げ、保育所の待機児童対策に積極的に取り組んできました。平成29年4月までに待機児童を解消するとお約束してきました。
この3年だけでも定員枠を都内最大となる2,657人増やしました。本年4月には練馬区独自の幼保一元化施設である「練馬こども園」を開設して、3歳児から5歳児の枠を926人確保し、3歳児以上の待機児童は、ほぼ解消しました。
全国でも例のない積極的な取り組みにもかかわらず、0歳児から2歳児では依然として待機児童が存在します。今年4月1日の保育所待機児童数は166人でしたが、ほぼ全員が0歳児から二歳児でした。平成29年4月に待機児童をゼロにするため、新たに保育所待機児童ゼロ作戦を展開することにしました。
具体的には、今年度当初に計画した550人の保育所定員をほぼ倍増して1,000人に拡大します。そのため、まず、0歳児から2歳児を中心に認可保育所、小規模保育施設の新規整備を行います。第二に、既存の保育施設を有効活用し、1歳児から2歳児の定員枠を拡大します。面積や保育士の配置基準は維持してまいります。第三に、区立幼稚園の空き教室や保育所の遊戯室などを活用して、新たに1歳児1年保育を実施します。これらの取り組みの一部は来月から実施し、先行して受入れを行います。
私は、基礎的自治体が待機児童数減の競争を強いられている現状に大きな疑問を感じています。そもそも待機児童の捉え方について、国が場当たり的に対応していることが問題です。認可保育所以外の保育室、家庭福祉員、認証保育所は、23区と都が大都市特有の多様な保育ニーズに応えるため、国の反対を押し切って創設し育ててきた制度です。長い歴史があり、民間事業者が努力し運営してきたものであります。国がこれまで認めてこなかったことこそが問題であり、国の新基準は、ようやく実態に追いついてきたことを示すものです。
本来、待機児童対策をはじめとする子育ての支援は、自治体の保育行政だけではなく、育児休業などの労働政策や児童手当などを含めた総合的な政策として国が取り組むべきものです。また、幼稚園を活用した、幼保一元化の実現も不可欠です。
区としては、こうした抜本的な対策を講じるよう国に強く求めながら、目の前にいる待機児童のために、このゼロ作戦を全力をあげて進めてまいります。
学童クラブの待機児童数も近年増加傾向にあります。一方、学校外の児童館や地区区民館にある学童クラブは利用が少なく、空きが生じているところもあり、全体では利用の偏りがあります。こうした実態を踏まえ待機児童を解消するには、学童クラブを学校内に整備することが重要です。
本年4月、学童クラブとひろば事業を一体的に運営する「ねりっこクラブ」を小学校3校で開始し、学童クラブの定員を150名増やしました。待機児童を解消するため、今後も「ねりっこクラブ」の拡大を図ります。来年度、新たに5校で「ねりっこクラブ」を実施するため、具体的な準備を始めます。
また、学童クラブの委託化を進め、利用時間の拡大に取り組んでまいります。
本定例会には、「ねりっこクラブ」の拡大および学童クラブの時間延長に伴う条例改正案を提案しています。
高齢者施策の充実
次に、高齢者施策の充実についてです。
要介護高齢者は増加を続けており、特別養護老人ホームの整備は、区政の重要な課題であります。土地の確保が困難ななか、国有地を活用して上石神井3丁目に、特別養護老人ホームを整備することとしました。平成30年度の開設に向け、3月に運営事業者の選定を行いました。今後とも国有地の活用や土地活用セミナーの開催により、用地の確保と事業者の誘致に取り組んでまいります。
4月には、「街かどケアカフェこぶし」を谷原出張所内に開設しました。専門スタッフが健康相談や介護予防体操などのサービスを提供するほか、様々な地域団体が認知症カフェ、コミュニケーション講座などを実施しています。ここはまた、区民参加と協働の拠点ともなります。
今月20日から「はつらつシニアクラブ」事業を開始します。身近な地区区民館などで体力測定会を開催し、専門的な見地からアドバイスを行います。あわせて、それぞれの高齢者に適した地域活動団体を紹介し、健康づくりに取り組めるようにします。
介護人材の確保は、重要な課題です。4月から介護職員の初任者研修の受講料助成を開始しました。介護事業者の求人・採用活動を支援するため、アドバイザー派遣事業を新たに始めます。元気高齢者を補助作業のパートタイムで活用できる仕組みをつくります。
都市基盤の整備
次に、都市基盤の整備についてです。
私は、練馬区が持つポテンシャルを最大限活かして、快適でみどり豊かなまちを築くためには、都市インフラの充実が必要不可欠であると確信しています。
昨年度末、都と共同で「東京における都市計画道路の整備方針」いわゆる「第四次事業化計画」を策定しました。都市計画道路の整備が大きく遅れている練馬区では、都内最長となる18.5キロメートルが優先整備路線に位置付けられました。第四次事業化計画を着実に進め、都市計画道路の整備率を都心部と同程度の8割にまで向上させることを目指します。消防活動困難区域の解消、豊かなみどりを楽しめる歩道や自転車走行空間の整備など、地域の皆様のニーズに沿った道路づくりを進めてまいります。
都市計画道路の整備と合わせて、西武新宿線の連続立体交差化の早期実現をはじめ、円滑な交通の妨げとなる踏切の解消を目指します。
私は、大泉第二中学校と交差する補助135号線および補助232号線については、就任直後に現場を見て、従来の整備計画素案には問題があると判断し、見直しを行うこととしました。この間庁内で検討を進め、本年3月には、都市計画、教育、建築等の各分野の外部委員で構成する「有識者委員会」を設置しました。委員会では、教育環境の保全と道路整備を両立させ、将来に課題を先送りしない方策を検討していただいています。今後、委員会の助言・提言をもとに、地域の皆様と意見交換を行い、新たな整備計画素案をまとめてまいります。
先月、「練馬区無電柱化基本方針」を策定しました。都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を柱としています。都市計画道路や生活幹線道路の整備にあわせて無電柱化を進めます。歩道幅員が狭く無電柱化が難しい道路については、関係機関による技術検討会、住民の方々との協議会を設置し、新たな整備方式を検討します。まずは、区民や事業者と協働して区道でのモデル事業に取り組みます。
将来の世代に誇りうるまちを築くためには、第四次事業化計画を策定した、今この時にこそ、都市計画道路の整備を積極的に進めなければなりません。私は、まちづくりの理想を掲げて、区民の皆様のご理解をいただきながら取り組んでまいります。
大江戸線の延伸
次に、大江戸線の延伸についてです。
区北西部は、23区に残された数少ない鉄道空白地域であり、大江戸線の延伸は、これを大きく改善するとともに、練馬区が持つ潜在力を更に引き出し、区全体を発展させるものであり、まさに区の悲願であります。
昨年1月から、私の指示に基づき、東京都の関係部局と事務レベルによる協議を進めてきました。これまでに延伸の必要性、収支採算性の考え方、新駅周辺を含む沿線まちづくりの方向性など、基本的な事項について都区間で認識を共有するに至りました。また、様々な機会を通じ、国や都への働きかけを行っています。
本年4月、国の諮問機関である交通政策審議会は、国土交通大臣に対し「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」答申し、24の意義あるプロジェクトを示しました。大江戸線の光が丘から大泉学園町(ちょう)までの延伸は、「導入空間となりうる道路整備が進んでおり、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき」と高く評価され、進めるべき6つのプロジェクトの一つに選定されました。既に都は、昨年7月、大江戸線の延伸を、優先的に整備を検討すべき5路線の一つに位置付けています。国と都から整備に向けて明確な位置付けを得ることが出来ました。
この間進めてきた都との実務的な協議が成果を挙げたものであります。長きにわたる地域の皆様のご支援の賜物であり、心から感謝を申し上げます。
事業着手に向けて、これからが正念場であります。交通政策審議会答申で課題とされた費用負担のあり方、環境影響評価、都市計画などの進め方について、緊密に都との協議を進めます。区としても、沿線まちづくりを加速させるとともに、大江戸線延伸推進基金の積み増しを積極的に行い、一日も早い事業化を目指します。
オリンピック・パラリンピックに向けた取組
次に、オリンピック・パラリンピックに向けた取組についてです。
8月5日から開催されるリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックまで、65日となりました。日本代表として、練馬区にゆかりのある4人の選手が出場します。7月には壮行会を開催し、区を挙げて応援いたします。
東京オリンピック・パラリンピックの機運醸成に、区民の皆様とともに取り組むため、来月、担当課を設置します。東京大会の開催に向けて、広く区の魅力を発信し、外国からのお客様をお迎えできるよう、文化、観光、都市農業など幅広い分野で取組を進めていきます。
区民参加と協働
次に、区民参加と協働についてです。
先日「街かどケアカフェこぶし」で、活動団体の皆様と意見交換を行いました。各団体からは、「地域団体の相互連携や人材育成の拠点としたい。」「ここを拠点に、サテライトのように展開したい。」「地域の様々な情報をまとめて、発信する仕組みを作りたい。」といった具体的な提案をいただきました。団体同士で交流しながら、活動を広げたいという意気込みが、ひしひしと感じられたところであります。私からは、ケアカフェの成功を確信している、団体の自発性を大切にして可能な限り自由に活動できるよう支援したい、とお伝えしました。
地域の現場で起こっている課題を区民と区が共有し、将来を見通してともに知恵を絞ることが、新しい成熟社会に立ち向かう基本であります。区は、区民生活の現場に即して、行政の分野を超えた様々な工夫を凝らし、参加と協働を進めていきます。
本年4月、区民参加と協働を推進するため協働推進課を設置しました。新たに設置した課は、地域の皆様のご意見を直接受け止め、様々な活動の連携を図るとともに、区役所の中でタテワリの壁を超えたコーディネーターの役割を担います。既に、「ねりまビッグバン」では、区民からの提案の実現に向けて、職員と地域の皆様が連携した取り組みが進んでいます。
区民参加と協働の実現には、楽しみながら一体感や達成感を得られる機会の充実も必要です。「よりどりみどり練馬」のCM撮影、練馬まつり・照姫まつり、みどりの風練馬薪能などでは、今まで以上に多くの区民の皆様が参加できるように工夫してまいります。
文化振興協会については、このたび、初の民間人理事長として、先ほど素晴らしい演奏を披露していただいた、大谷康子氏をお迎えするとともに、練馬文化センターや美術館など文化施設の運営を一元化しました。同協会を核として、質の高い文化芸術と区民自らが参加する文化活動がともに楽しめる、練馬ならではの都市文化の発展を目指してまいります。
来年の練馬区独立70周年記念事業は、新しい時代を迎えるにふさわしいものとなるよう、広範な区民の皆様と一緒に盛り上げていきたいと考えています。広く区民の皆様から企画提案を募集します。近々、区民による実行委員会を立ち上げ、事業や広報についての検討を開始します。
区長に就任して3年目を迎えました。これまで開かれた区政の実現に向けて、区民参加と協働の深化に努力してきました。区民とともに歩む区政を着実に推進し、「改革ねりま」の実現に向け、持てる力の全てを傾注してまいります。
なお、本定例会には、大泉高齢者センターの設置にかかる条例など、31件の議案を提出しております。よろしくご審議のほどお願いいたします。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
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