令和5年 第一回定例会 区長所信表明
ページ番号:257-765-034
更新日:2023年2月6日
- はじめに
- 令和5年度当初予算案及び令和4年度補正予算案
- 新型コロナウイルス感染症対策
- 子育て・教育施策
- 高齢者施策
- 福祉・医療施策
- 防災・まちづくり
- 経済、都市農業、文化・スポーツ施策
- 区政改革・区民協働
- 未来を拓く
はじめに
所信表明の様子
令和5年第一回練馬区議会定例会の開会にあたり、区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思います。
昨年、欧米各国のコロナ対策の転換により、世界経済の回復が期待されたものの、ロシアのウクライナ侵略によって世界情勢が不安定化し、景気後退が懸念されています。
我が国は、少子高齢化・人口減少により経済活力が弱まり、国際競争力が低下するなかで、赤字国債の発行を重ねた結果、国と地方を合わせた債務残高はGDPの2倍を超え、世界に類を見ない状況となっています。長期金利や物価の上昇が、国民生活や国家財政に及ぼす影響が危惧されています。こうしたなか、国家財政の再建と、社会保障費の増加・少子化対策・安全保障等々、国の将来を左右する大きな課題への対応を両立させなければなりません。今、世界も日本も、大きな分岐点を迎えているのです。
練馬区も例外ではありません。一般財源の不足が見込まれるなか、義務的経費が5割を超えるなど、依然として予断を許さない財政状況が続く一方で、老朽化した区立施設の更新、都市インフラの整備など、課題が山積しています。コロナ禍や物価上昇による区民生活や事業活動への影響も続いています。
こうした厳しい状況にあるからこそ、区民の皆様が確かな希望を持てるよう、グランドデザイン構想でお示しした将来像の実現に向けて、施策を着実に推進しなければならないのです。そのために、就任以来積み立ててきた基金や起債の活用など、これまで培ってきた財政運営力を最大限発揮して予算編成に当たりました。
令和5年度当初予算案及び令和4年度補正予算案
令和5年度当初予算案は、「これまでの政策展開の成果を踏まえ、練馬区の更なる発展に向けた取組を強化する予算」と位置付けました。改定アクションプランや(仮称)取組強化プランの着実な実行、新型コロナと共存する社会を実現するための対策、物価上昇への対応などを中心に編成しました。
一般会計予算額は2,987億円、昨年度比75億円の増、うち55億円は、教育、子育て、高齢者、障害者福祉の推進などの施策を充実するものです。学校改築、道路、公園の整備など区民生活を支える社会資本を形成する事業には、基金と起債を可能な限り活用し、持続可能な財政運営の堅持に努めています。
また、昨年12月に成立した国の第2次補正予算を受け、出産・育児における相談支援と経済的支援を一体的に行う取組みなどを充実します。来月から実施するため、今年度4度目となる補正予算を提案しています。
新型コロナウイルス感染症対策
次に、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
先月27日、国は、コロナ禍からの社会の正常化に向けて、感染症法上の分類を、5月8日に、2類相当から5類へ引き下げる方針を決定しました。
これに伴い、感染動向の把握は、特定の医療機関からの報告に変更されます。医療費の公費支援・医療提供体制移行の具体的方針は3月上旬を目途に示し、マスクの取り扱いは、見直し時期も含め、早期に検討結果を示すとしています。4月以降のワクチン接種の対象や接種間隔などは検討中ですが、必要な接種は、引き続き自己負担なく受けられるようにするとされました。
区は、国の方針の具体化を受け、適切に対応していきます。
国内の第8波による新規陽性者数は減少傾向にあります。都内の感染は拡大傾向にないものの、引き続き基本的な感染防止対策の徹底が必要な状況にあり、区も同様の傾向にあります。
区内ではこれまでに174人の方がお亡くなりになっています。深く哀悼の意を表するとともに、現在も療養されている皆様の一日も早い回復を祈念申し上げます。
区民の皆様には、厳寒期にあっても定期的な換気を励行し、基本的な感染防止対策の徹底、早めのワクチン接種、抗原検査キット等医薬品の備えをお願いします。
感染拡大の防止と自宅療養者支援
区はこれまで、ワクチン接種に積極的に取り組み、210万回を超える接種を「練馬区モデル」により実施しました。接種期間は3月31日までとなっており、SNSを活用した接種情報の周知などに努めています。
自宅で療養されている、高齢者や重症化リスクのある方に、かかりつけ医等の往診、電話健康観察や、薬の置き配などの支援を独自に行い、入院や施設への受け入れがスムーズに出来るよう、きめ細やかに対応しています。
区民・事業者の支援
コロナ禍と物価上昇により生活に困窮する区民、運営に影響の出ている介護・保育等の施設経営を支援するため、これまでに住居確保給付金を約8,300件、施設等運営支援臨時給付金を約400件支給しており、来年度も引き続き実施します。区独自の生活支援臨時給付金を約500件、子育て家庭臨時給付金を約6,800件、国の電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金を約7万3,000件、それぞれ支給しました。
事業者に対する区独自の貸付制度では、先月末までに、特別貸付5,472件478億円、借換え特別貸付382件55億円の融資をそれぞれ実行しています。物価上昇の影響を受ける事業者の資金繰りを支援するため、昨年10月から、緊急経営支援特別貸付を開始し、先月末までに246件19億円の融資を実行しています。来年度は、借換え特別貸付と緊急経営支援特別貸付を9月末まで延長します。
子育て・教育施策
次に、子育て・教育施策についてです。
(仮称)東京都練馬児童相談所の整備
子供を虐待から守るために、区による地域に根差したきめ細かい寄り添い支援と、都の広域的・専門的支援のさらなる連携強化に取り組んできました。
都は6年度、(仮称)東京都練馬児童相談所を区子ども家庭支援センターと同一施設内に開設します。都の経費負担により、来年度、区が施設内の改修工事を実施します。
都区合同の検討会議や虐待通告に基づく合同の家庭訪問などが常時可能となり、一時保護や児童養護施設入所などの法的対応も迅速に行われるようになります。さらに都は、練馬一時保護所を新設するための基本設計を予定しています。
来年度、区は、都児相の設置に向けて、都区連携をさらに強固なものとするため、子ども家庭支援センターの専門職員を大幅に増員します。あわせて、心理職を活用して、再発防止等の取組みを強化します。
支援が必要な子どもたちへの取組みの充実
誰もが等しく公平に必要な教育が受けられるよう、一人ひとりに応じたきめ細かな支援を進めます。
昨年度から2か年かけて実施した不登校実態調査の結果を踏まえ、不登校対策方針を来年度早期に改定し、学習支援や居場所支援などの取組みを強化します。
昨年実施したヤングケアラー実態調査の結果、ケアの負担で生活に影響のある子どもが一定数存在し、自分からSOSを発しづらい状況にあることが明らかになりました。学校や関係機関が子どもや家庭の状況を把握し、要保護児童対策地域協議会を活用して支援します。
また、いつでも子どもがSOSを発信出来る「(仮称)子ども相談アプリ」の導入や、スクールソーシャルワーカー、子ども家庭支援センターの専門職員の増員により、ヤングケアラーや不登校、虐待など課題を抱える子どもや家庭の相談支援体制を強化します。
区は国に先駆けて、平成27年に区立学校で医療的ケア児の受入れを開始し、保育所等に拡大しました。さらに受入れ人数の増、重症心身障害児在宅レスパイト事業、医療型ショートステイなどを実施してきました。
本年10月、こども発達支援センターに総合相談窓口を設置します。コーディネーターが医療や福祉、地域生活に関わる相談に対応するとともに、医療的ケア児を育てた経験のある家族が相談・助言にあたります。学校や保育所等の新しい支援方針を策定し、受入れ環境を整備するとともに、医師や関係者による協議の場を設置し、支援の方向性や具体的な取組みを検討します。
子育てサポートの充実
少子化、核家族化、コミュニティの希薄化などにより、社会的に孤立し、子育てに不安や負担を感じる保護者が増えています。
区は、妊婦全員面談や乳幼児全戸訪問などを行い、産後ケアやファミリーサポート事業などの支援を行ってきました。来年度からは、オンライン面談を開始するとともに、問い合わせに対応するチャットボットを導入します。
国や都と連携し、昨年4月以降に妊娠・出産した方に、妊娠時6万円、出生時15万円、一歳到達時1万円、合計22万円相当のギフトカード等を支給します。
保育サービス等の拡充
区長就任以来、区独自の幼保一元化施設である「練馬こども園」の創設、「待機児童ゼロ作戦」の展開などにより、全国トップクラスとなる8,000人以上の保育定員増を実現し、2年連続で保育所待機児童ゼロを達成しました。
これを継続するため、本年4月には、私立認可保育所9園を新設し、定員を485人増加させます。今年度認定した練馬こども園一園が事業を開始し、来年4月に向けて、谷原5丁目の区有地に私立認可保育所1園を整備します。
全国初となるLINEを使った「保育所探し」や「保育指数シミュレーション」などの保活支援サービスを実現し、保育のICT化を進めてきました。秋から始まる来年4月入園選考から、時間や場所を問わず、スマホ等でオンライン申請が出来るようにします。
障害児保育の受入れ促進やスキルアップのため、私立認可保育所全園に、臨床心理士や社会福祉士等を派遣して巡回指導を行います。
幼稚園送迎バスの置き去り事故防止に向け、国は昨年12月に安全装置のガイドラインを策定しました。私立幼稚園等に対し、安全装置等の導入に必要な経費を補助します。
放課後の居場所づくり
地域・事業者・区の協働により、全ての小学生が安全かつ充実した放課後を過ごすことが出来る環境を引き続き整備します。「学童クラブ」と「ひろば事業」を一体的に行う「ねりっこクラブ」は、小学校65校中45校で実施していますが、早期全校実施に向け、来年度は7校開設し、52校で実施します。
教育環境の充実
安全で快適な教育環境の整備を進めます。小中学校の改築は、2校で設計に着手します。また、石神井南中学校で、区で初めてとなる長寿命化改修の設計に着手します。体育館への空調機設置工事は、18校で実施し、新たに19校で設計を行います。7年度の全校整備を目指します。
高齢者施策
次に高齢者施策についてです。団塊の世代全てが後期高齢者となる令和7年に向け、地域包括ケアシステムの確立を着実に進めます。
高齢者地域包括ケアシステムの確立
地域包括ケアシステムの中核を担う地域包括支援センターを4月に2カ所開設し、27カ所体制が整います。練馬光が丘病院跡施設に医療・介護複合施設を整備するため、改修工事に着手し、7年4月の開設を目指します。都市型軽費老人ホームと看護小規模多機能型居宅介護施設の6年度開設に向けた準備を進めます。
70歳と75歳を対象に実施している「もの忘れ検診」を70歳以上の希望者に拡大し、医療機関の受診や介護保険サービスなどの支援につなぎます。
フレイル予防・介護予防の推進
「高齢者みんな健康プロジェクト」における栄養士等個別訪問の対象に、健康診断未受診などにより状態が把握出来ていない80歳以上の高齢者を加え、医療機関受診等の各種支援につなげます。
利用者ごとの趣味や関心に合わせて社会参加先の情報を発信するスマホアプリを導入し、高齢者が元気で過ごせる環境づくりを進めます。初心者を対象としたスマホ教室の実施回数を増やすとともに、習得したい内容を重点的に学ぶ実践的な教室を新たに開催し、高齢者のデジタル格差解消を促進します。公衆浴場を活用して、体操・レクリエーションを実施し、入浴により交流を深めるフレイル予防事業を開始します。
交流・相談・介護予防の拠点となる街かどケアカフェは、常設型を1カ所、障害福祉団体などとの協働により地域サロン型を3カ所増設し、全体で37カ所とします。
福祉・医療施策
次に、福祉・医療施策についてです。
障害者の意思疎通支援の充実
障害者一人ひとりの自立した地域生活を支えるためには、障害特性に応じた多様な意思疎通手段を確保しなければなりません。
先月、心身障害者福祉センターに「障害者ICT相談窓口」を開設しました。窓口相談に加え、自宅での情報支援機器のセットアップ等を支援しています。また、来年度から機器の給付対象を拡大し、知的障害者等を加えます。
本年6月から、失語症の方の会話を補助する意思疎通支援者の派遣事業を開始します。8月から、買い物などの日常生活で率先して声をかける、「コミュニケーションサポーター」の養成研修を始めます。
区民の健康づくり
帯状疱疹は、80歳までに3人に1人が発症するとされています。約2割の方が、神経痛の後遺症に苦しんでいます。現在、ワクチンは50歳以上の方が対象で全額自己負担ですが、来年度から費用の半額程度を助成し、接種を促進します。
半数の方が生涯に一度はがんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっています。死亡率を減少させるには、早期発見・早期治療が重要です。受けられる検診が一目で分かるよう、受診券をチケット化し、がん検診の受診率向上を目指します。
ひとり親家庭自立応援プロジェクトの充実
私は永い間、行政のひとり親家庭への取組みが不十分で、行き届かないものと感じてきました。そこで、区長就任以来、力を入れて取り組んできました。平成29年度にひとり親家庭自立応援プロジェクトを発足させ、23区で最多の取組みを実施しています。
今年度実施したニーズ調査に基づき、自立に向けた支援策をさらに充実します。オンライン相談及び弁護士による土曜日の法律相談、高等職業訓練促進給付金の増額、養育費確保の裁判外紛争解決手続き費用の助成を実施します。
中高年のひきこもりや8050問題への支援
中高年のひきこもりや8050問題は、課題が複合的であり、対象世帯を早期に発見し、関係機関が一体となって支援する必要があります。
社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターを増員し、アウトリーチ型の支援を開始するとともに、支援調整ニーズの増加に対応するため、関係機関の連携を強化します。また、社会参加に向けたきっかけづくりとなるよう、就労サポート拠点「明日葉ステーション」で居場所支援を開始します。
防災・まちづくり
次に、防災・まちづくりについてです。
避難行動要支援者の個別避難計画の作成
災害対策の重要な柱の一つは発災時の避難です。なかでも要介護高齢者や障害者など自力で避難することが困難な方が円滑に避難出来るよう、事前に備えておくことが必要です。来年度から、避難行動要支援者名簿の登録者全員の現況調査を行い、あわせて、「どこへ」「だれと」避難するかをあらかじめ定める個別避難計画の作成を進めます。
防災まちづくりの推進
狭隘な道路沿いに老朽木造住宅が密集し、地震発生時の危険性が懸念される地域では、密集事業や区独自の防災まちづくり推進地区の取組みにより、災害に強いまちづくりを進めています。
桜台東部地区では、これまで地域の皆様と共に、防災まちづくりの検討を重ねており、来年度、密集事業に着手します。建物の不燃化や耐震化、ブロック塀撤去促進の啓発を行うとともに、緊急車両の通行や円滑な消火・救援活動に必要な道路の拡幅整備に向け、現況測量を実施します。
都市インフラ整備とまちづくり
鉄道や都市計画道路など遅れている交通インフラの整備を着実に進め、これに合わせた周辺のまちづくりに取り組むことで、快適で暮らしやすいまちの実現を目指します。
大江戸線の延伸は、今年度より東京都交通局が、地下鉄十二号線の延伸に関する調査と明示した経費を計上し、調査・検討を進めています。来年度区は、都との協議を加速するとともに、早期着手を強く要請します。(仮称)大泉学園町駅予定地周辺では、大泉学園通りの拡幅事業に引き続き取り組むとともに、駅前広場の整備や商業施設等の立地誘導など、新たな拠点づくりを進めます。
西武新宿線の連続立体交差化は、都、隣接区市、鉄道事業者とともに、来年度の事業認可取得に向けて準備を進めます。鉄道と交差する補助230号線と武蔵関駅交通広場は、連続立体交差化とあわせ、事業認可取得に取り組みます。補助135号線は、事業化に向け現況測量を開始します。
石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業は、六年度の再開発ビルの工事着手を目指します。来年度は、権利変換計画の認可を取得し、地区内に居住・営業している方の移転、既存建物の除却を行う予定です。区は引き続き、円滑な事業実施に向けた取組みを支援します。補助232号線の再開発事業区域から富士街道までの区間については、関係権利者と用地取得に向けた協議を進めます。
練馬のみどりを未来へつなぐ
稲荷山公園と大泉井頭公園は、白子川を軸とするみどりのネットワークの拠点となる都市計画公園です。稲荷山公園では「武蔵野の面影」をテーマに、年度内設置予定の(仮称)専門家委員会や地域の皆様の意見を踏まえ、来年度は整備に向けたロードマップを作成します。大泉井頭公園は「水辺空間の創出」をテーマに、基本計画策定に向けた基礎調査を実施します。
公園のトイレが清潔・快適で、地域に相応しい個性を備えていることは、公園のみならず練馬区のイメージアップにつながります。来年度、維持管理の在り方も含めた「(仮称)公園等トイレ改修計画」を策定します。開園から約30年が経過し、全面改修を行う平成つつじ公園のトイレを、区民協働で、練馬駅前に相応しいものとするなど、区内の公園トイレのリニューアルを計画的に進めていきます。
経済、都市農業、文化・スポーツ施策
次に、経済、都市農業、文化・スポーツ施策についてです。
産業振興、商店街振興
区が行った事業所実態調査では、コロナ禍による経営悪化、物価上昇による収益の低下など様々な課題が明らかになりました。4月から練馬ビジネスサポートセンターの中小企業診断士を増員して、事業者の課題を共に考え、中長期的な経営戦略の策定実行を支援します。
引き続き、キャッシュレス決済ポイント還元事業により、区内商店街等での消費喚起につなげるとともに、商店街のデジタル化を推進します。また、練馬区商店街連合会が実施する30パーセントのプレミアム付商品券事業を来年度も支援します。
都市農業施策
農地や屋敷林などが残る地域の風景を保全、育成する拠点として整備を進めてきた「(仮称)農の風景公園」が来月開園します。名称は、近隣小学校の児童から募集した案の中から、練馬の農の風景を次世代に引き継いでいく思いを込め、「高松みらいのはたけ」としました。
伝統農産物「練馬大根」、ビール麦「金子ゴールデン」をはじめ、練馬で作られている野菜や果樹を栽培します。種まきから収穫までの一連の体験事業を実施し、校外学習の場としても活用します。
なお、「高松みらいのはたけ」及び「農の学校」の設置管理について必要な事項を定めるため、練馬区立学びの農園条例を制定することとし、本定例会に条例案を提出しています。
文化施策
みどりの中で優れた文化芸術を楽しめるまち、身近な場所で誰もがスポーツを楽しめるまちの実現は、区長としての私の理想です。
区立美術館と貫井図書館は、国内外で活躍する建築家で京都大学教授の平田晃久氏に設計をお願いしました。4月からは、秋元館長の後任として、「横浜トリエンナーレ」などの実績がある伊東正伸氏を美術館長に迎え、展覧会などのソフト事業の具体的な検討を進めます。
石神井公園ふるさと文化館では、時代と人を描いた「龍-RON-」や「JIN-仁-」など数々のヒット作で知られる練馬区在住の漫画家村上もとか氏を、4月に館長に迎えます。館所蔵のアニメ資料の活用や区ゆかりの漫画家との連携事業などを展開していきます。
スポーツ施策
石神井松の風文化公園を拡張し、フットサル・テニス兼用コートのほか、スケートボードが出来る広場を整備するため、8年度の開設に向けて設計に着手します。
ユニバーサルスポーツフェスティバルの一環としてボッチャ交流大会を実施するとともに、各地域でのパラスポーツイベントを充実します。
区政改革・区民協働
DXで区民と区政を直につなぐ
区はこれまで、目に見える形で窓口改革を進めてきました。場所や時間を選ばずスマホやパソコンから手続き・相談が出来る「行かない、書かない」デジタル区役所の実現に向け、申請等のオンライン化をさらに推進します。区民事務所で受け付けている住民票や戸籍証明、税証明などの請求手続きを、8月からオンラインで出来るようにします。また、引っ越しやおくやみの手続き、妊娠中の健康相談やメンタルヘルスなどの問い合わせに対応するチャットボットを導入します。
キャッシュレス決済を拡大し、子ども家庭支援センターとこども発達支援センターで、7月から一時預かり事業などの利用料の支払いにクレジットカードや電子マネー等を使えるようにします。
区民協働の推進
基礎的自治体である区にとって、最も重要なのは住民自治の実現です。区政最大のパートナーである町会・自治会の活動活性化を目指します。コロナ禍により縮小を余儀なくされた活動の再開とさらなる充実に向けて、来年度は、(仮称)地域応援臨時交付金を支給します。(仮称)ねりま協働ラボを立ち上げ、町会・自治会とNPO・ボランティア団体がコラボした取組みへの支援を行うとともに、地域活動への新たなチャレンジを後押しします。
また、区東部地域で、区内2カ所目となる地域活動倉庫の整備に着手します。
未来を拓く
区長就任以来、数々の練馬区モデルを立ち上げ、全国自治体を先導する多数の施策を実行して来ました。それが漸く実を結んで、希望の芽が育ち始め、今、練馬区はさらに発展する好機を迎えています。
4月3日には、名誉区民である牧野富太郎博士が主人公のNHK朝ドラがスタートします。牧野記念庭園の「書斎再現プロジェクト」には、区民の皆様から目標額500万円に迫る寄付を頂いています。昨年末から、地元商店会と連携して「ボタニカルアート展」を開催していますが、引き続き地域の皆様、博士出身地の高知県と連携して盛り上げていきます。
年半ばにはハリー・ポッター スタジオツアー東京がオープンします。ゆくゆくは年間300万人の来場が想定される大プロジェクトです。ワーナー・ブラザースと連携して、地元商店会をはじめ、産業団体、公共交通機関、区内3大学などと協力し、オープンへの機運醸成と来訪者の区内周遊への取組みを進めます。
そして秋、11月19日には、全国都市農業フェスティバルを光が丘で開催します。国分寺市、松戸市、名古屋市、京都市の招聘が決定しました。世界都市農業サミットで確認出来た都市農業の魅力と重要性を、各都市の皆様とともに、全国に発信します。
みどりの中で優れた文化芸術に親しめるイベントを創設します。名誉区民であり人間国宝である野村万作さんをはじめ、三代にわたる狂言の継承をテーマにした「(仮称)野村万作から萬斎・裕基へ」を、日本を代表するヴァイオリニスト大谷康子さんプロデュースによる野外音楽祭「(仮称)ねりまの森の音楽祭」を開催します。
政策面でも大きく前進します。順天堂練馬病院が今年度中に三次救急医療機関に指定され、また、予てからの練馬区の主張に沿って、(仮称)東京都練馬児童相談所が来年開設されます。さらには、大江戸線の延伸、西武新宿線の高架化、区立美術館のリニューアルなど、我々の前には練馬区発展の道が大きく拓けています。
全国から注目が集まる大きなプロジェクトが目白押しである今こそ、区の政策や魅力を広く発信する絶好の機会です。「伝える広報」から効果的・戦略的な「伝わる広報」へと転換し、「ねりま推し」を合言葉に、区民の皆様と一緒に練馬区を盛り上げていきたい。そう考えています。
私は半世紀にわたって行政に携わり、あるべき行政とは本来どういうものなのかと考え続けてきました。その答えは、長期的視点に立ち、社会全体の利益を実現する、それに尽きると考えています。
しかし、実行するには確固たる決意が必要です。政治家には、どんなに頑張っても自分の理想や信念が受け入れられず孤立せざるを得ない場面があります。そうした時、誰しも目先の安定を求め、安全な方向に向かいたくなってしまいます。しかし、いかなる場合でも受け狙いや人気取りに走っては絶対にならない、そうあってはならないと、私は常に自分自身に言い聞かせながらやってきました。
児童相談所の設置問題がその典型です。多くの区が区立児相の設置に賛同しているなかで、粘り強く独自の取組みを進めた結果、練馬区に都児相が設置されることになりました。
私たち政治に携わる者には、孤立を恐れず、信念を貫いて輿論を興し、連帯の輪を広げていく折れない心、日々の営みが求められる、そう確信しています。
「改革ねりま第Ⅲ章」の実現に向け、引き続き区議会の皆様、区民の皆様と手を携え、練馬区の未来を拓いていく決意です。ご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。
なお、本定例会には、「令和5年度一般会計歳入歳出予算」など、27件の議案を提出しております。宜しくご審議のほど、お願いいたします。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
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