第2章 練馬区公文書公開条例の見直すべき事項 1~20
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- 第2章 練馬区公文書公開条例の見直すべき事項 1~20
ページ番号:689-134-206
更新日:2010年2月1日
- 1 条例の名称
- 2 「公開」と「開示」の区別
- 3 条例の目的
- 4 公文書の定義
- 5 公開請求権者の範囲
- 6 公開・非公開の枠組み
- 7 個人情報
- 8 法人情報
- 9 審議、検討および協議に関する情報
- 10 事務または事業に関する情報
- 11 国等との協力関係維持に関する情報
- 12 公共の安全等に関する情報
- 13 法令秘情報
- 14 公益上の理由による裁量的公開
- 15 存否応答拒否情報
- 16 部分公開
- 17 公開請求の手続
- 18 文書不存在の取扱い
- 19 理由付記
- 20 第三者保護に関する手続
1 条例の名称
条例の名称は「練馬区情報公開条例」とする。
【説明】
現行の公文書公開条例は、公文書の定義として、職務上作成または取得した文書等の他にビデオテープや録音テープも含んでいる。しかし、情報化の進展に伴い、区においてもパソコン・ワープロの普及やインターネットによる行政情報の提供など、電磁的情報が次第に増えつつある。
そこで、見直し後の条例は、電磁的情報を対象公文書に含むこと、情報公開制度の総合的推進を積極的に図ること、あるいは固いイメージから区民にとっても親しみあるわかりやすい名称とすることを考慮すると、「練馬区情報公開条例」が適当と思われる。
《参考》
国:行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)
2 「公開」と「開示」の区別
情報公開法は、請求があって公開するときは「開示」という表現を用いているが、検討の結果、これまで通り「公開」を維持するものとする。
【説明】
(1)「公開」を維持すべきとする意見
1.公文書公開条例制定以来約14年を経過し、「公開」が区民の間に浸透し、区民にとって分かりやすいものとなっている。この事実は重いので、「公開」を使用しても良いのであれば維持すべきである。
2.概念の区別については、それほど厳格にする必要はない。
3.「開示」は国および都道府県で使用され、市町村レベルでは、今なお「公開」を使用している。
(2)「開示」に変更すべきとする意見
1.練馬区個人情報保護条例における自己情報については、「開示」としているので、整合を図る必要がある。
2.公開請求の場合に使用する表現としては「開示」とし、「公開」は、請求に基づく情報開示の他に情報の提供および公表施策を含めた、広い意味での情報公開制度全般をさすときに使用することにより、概念の区別と明確化を図ることができる。
3.言葉の意味では、「公開」は誰でもが同じに利用できる状態にすることで公衆に開放する場合に使用し、一方、「開示」は明らかに示すこととされている。
請求に基づく公開は、当該請求者だけに公文書を示すことであり、「開示」が妥当である。
以上の意見を比較検討した結果、「公開」の用語については培われた実績があること、「開示」に変更すべき論理的必然性に乏しいことなどにより、現行条例どおり「公開」 が適当と思われる。
なお、練馬区個人情報保護条例において自己情報の請求については「開示」の用語を用いている。これについては、公文書の「公開」は区民等の住民全般の請求に対し公開可能な情報を平等に示すことに対し、自己情報の請求の場合は他人に知られたくない自己に関する情報を開示請求者本人のみに示すことであり、情報の内容および公開の範囲において意味するものが異なり、区別することに理由があるものと考える。
3 条例の目的
1.区と区民との信頼関係のもと、より一層開かれた区政を確立するためには、区政の透明性の向上を図る必要がある。そのため、区は区民の「知る権利」を尊重することを明記し、区が保有している情報の公開性を高める。
2.地方自治の本旨に即した区政を推進していくためには、区が区政に関し区民に説明する区の責務、いわゆる「説明責任」を有していることを明記する。
【説明】
(1)「知る権利」の明記
「知る権利」とは、憲法学上、国民主権の理念を背景に、表現の自由を定めた憲法第21条に基づいて主張されている。表現の自由は、政府が保有する情報の公開を求める権利を含むという理解であり、「知る権利」と呼ばれている。 しかし、この権利は、基本的には抽象的権利であり、法律による制度化を待って具体的な権利となるという見解が有力である。また、最高裁の判例においても、請求権的な権利として認知されるに至っていない。
検討委員会では、情報公開条例は、「知る権利」を根拠とするよりもむしろ、健全な地方自治の発展、即ち、区民に対する説明責任や区民の区政参加により公正で透明な区政を遂行して行くために、情報公開請求権を区民の権利として積極的に保障したものである。したがって、「知る権利」を明記することは馴染まないのではないかとの意見があった。
しかし、「知る権利」という概念が「象徴」として、情報公開に対する国民の関心を高め、その制度化の推進に大きく寄与してきた役割は認められているところであり、また、情報公開法の制定の際には、国会の両議院は付帯決議を採択し、その中で「知る権利については引き続き検討を行うこと」とされている。
また一方、「地方分権」や「都区制度改革」など区政を取り巻く状況は、区政に新たな対応を求めている。特に、区と区民との垣根を取り除き、区民に開かれた、わかりやすい区政の実現が強く求められている。さらに、これからの区政運営について、区民との協働関係を構築し、区民福祉を実現する取り組みが重視されてくる。
このように区民との協働関係を構築し、開かれた区政を実現する前提としては、行政の透明性の向上を図ることがなによりも不可欠であると考える。そのためには、区が保有する情報の公開性を高めるとともに、総合的な情報公開制度の拡充が必要である。とりわけ、目的規定は情報公開制度全体を担う背骨ともいうべきものであり、上記の趣旨を強力に表現する文言が必要と考え、「知る権利」を明記した場合の効用を検討した。「知る権利」を明記することによって、
1.情報公開制度の目的を実現する強力な「象徴」としての機能が期待される。
2.解釈運用の規範としての役割を担い、情報の公開性(公開原則の徹底)を高めることが期待される。
3.情報公開に対する職員の意識の向上と啓発に繋がる効果も期待される。
この効用を考慮すると、「知る権利」の持つ不明確性という負の要因があるとしても情報公開制度に対する区の積極的姿勢を明確に示すことができるため、条例の目的に「知る権利」を尊重する旨を明記することとした。
(2)「説明責任」の明記
「説明責任」とは、区政について区民に説明する区の責務を示し、区政を信託した主権者である区民に対し、区としての行政活動の状況を明らかにして、それについて説明する責務をいう。
この「説明責任」は、国においては「国民主権の原理」、また地方自治においては憲法が定める「地方自治の本旨」、特に住民自治を踏まえ住民の行政への積極的な参加を促進し、地方自治における民主主義を実現するという理念を基礎とする。
したがって、区が区政について「説明責任」を有することを明記することは、区政全般に対する区民の理解を深め、公正で透明な開かれた区政を実現することを意味するため、請求に対する義務的な公開だけに限らず、区政情報の積極的な提供・公表など情報公開制度全般に通じる原理として捉えることが必要である。
このため、条例の目的に「説明責任」を明記することとした。
4 公文書の定義(第2条関係)
1.公文書の定義は、情報公開法が採用した「組織共用文書」(※注釈1)よりも広い概念である現行条例の「当該実施機関が管理しているもの」を維持するものとする。
2.公文書の範囲に、「電磁的記録」(※注釈2)を新たに加え対象範囲を拡大する。
【説明】
(1)公文書の定義
「組織共用文書」の概念は「職務上の内部検討に付された時点以降のもの」を対象文書として取り扱うこととなっている(都の解釈)。
しかし、現行条例では、「内部事務手続を開始したか否かを問わず、職員が職務上、文書等をまさしく作成し終えた時点または受領した時点」以降でかつ実施機関が管理しているもの(以下「管理説」という。)を公文書としている。
検討委員会では、説明責任との関連を考慮すると、説明責任の範囲を明確にするために管理説より概念的には明確な「組織共用文書」とすべきという意見があった。
しかし、現行条例の管理説は、組織共用文書よりも適用範囲が時系列的には若干広い概念として把握できるので、現行条例どおりとする。
ところで、公文書の定義として、職員の記憶など媒体に記録されていないあらゆる情報を対象とする考え方もある。しかし、媒体に記録されていない区政情報は、公文書と比較すると、正確性、客観性に劣り、さらに担当職員への心理的負担もかかる。
したがって、公文書の定義は、現行どおり紙等の媒体に記録されたものとする。
(2)電磁的記録の取扱い
現行条例では、電磁的記録のうち、ビデオテープおよび録音テープのみが対象となっている。
しかし、情報通信技術の目まぐるしい進展という現状を踏まえれば、磁気ディスクや光ディスク等に記録されている行政情報を公文書の対象外とすることは情報公開制度それ自体の形骸化を招くおそれがある。
そこで、公開請求の対象たる公文書を磁気ディスク等を含めた「電磁的記録」にまで拡大する必要があり、情報が記録されている媒体の種類にかかわらず、公開請求の対象とすべきである。
※注釈1:「組織共用文書」とは、公文書が、作成または取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織として共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において業務上必要なものとして利用、保存されている状態のものを意味する。
※注釈2:「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式などの人の知覚によっては認識することができない方式で作成された記録(フロッピーディスクに記録された情報等)をいう。
5 公開請求権者の範囲(第4条関係)
現行の「広義の区民および利害関係者」から「何人説」(※注釈1)もしくは、請求理由を明示する者までに請求権を与える「実質何人説」(※注釈2)のいずれかに範囲を広げる。
【説明】
現行条例においては、区民、区内に事務所等を持つ個人および法人その他の団体、区内の事務所等に勤務する個人、区内の学校に在学する個人(以上を「広義の区民」という。)および実施機関が行う事務事業に利害関係のあるものとされている。
確かに、区の情報公開制度は地方自治の本旨の理念を踏まえ、区としての説明する責務があるのは第一義的には区民であることからすれば、公開請求権者の範囲は現行条例の請求権者の範囲で十分である。したがって、請求権者の範囲を拡大するか否かは立法政策の問題となる。しかし、行政の広域化と情報化の進展など社会経済状況の変化に伴い、区民か否かにかかわらず、各種政策に対する関心を引き起こしており、これが区政への利益となって反映されることも考えられる。また反面、公害等区の区域を越えた広域的な負の影響も生じている。また、条例の目的に「知る権利」を尊重することを明記するとした趣旨からすれば、公開請求権者の範囲を現行条例より拡大することが求められている。
そこで、国や他の自治体の動向も踏まえ、「何人説」もしくは、その中間に位置する「実質何人説」のいづれかにすることとした。
なお、検討委員会では、つぎのような意見も出された。
・「実質何人説」は理由記載の内容および程度によって担当者レベルで請求権者と認めるか否かの実務上の問題も想定され、運用次第によっては法的安定性を欠くおそれが生じる。
・「何人説」とした場合、請求権者が全国に拡大し公開請求の増加も予想される。事務量の増加に伴う人件費等を含めた経費の増加を区民の税金であがなうことはいかがなものか。特に、民間企業の営業活動まで支援することは問題がある。
・以上の観点から、現行条例どおりの公開請求権者の範囲でよいのではないか。
※注釈1:「何人説」とは、公文書の公開請求権を外国に住む外国人を含めて「何人」にも認めるべきとの考え方をいう。これは、日本の首都、国際都市としての「東京」の性格などから、政策的に何人にも認めるべきことを根拠とするものや、知る権利は何人にも認められる基本的人権であることを根拠とするものなどがある。
※注釈2:「実質何人説」とは、「広義の区民」のほか、請求書に当該情報を必要とする理由、利用目的を記載できる者に請求権を与えるものであり、実質的には「何人」にも認めたことになる考え方である。
6 公開・非公開の枠組み(第6条関係)
現行条例の「非公開情報が記録されている公文書については、公文書の公開をしないことができる」旨の規定を、情報公開法と同様に「非公開情報が記録されているときを除き公開しなければならない」旨の規定に変更する。
【説明】
現行の「公開しないことができる」規定は、原則公開の例外として実施機関に公開義務を免除する形式を採用し、非公開を義務づけたものではないとされている。
しかし、非公開情報とは、個人や法人の権利利益を保護するため、または公益を保護するために設けられているものである。このことは、公文書に記載されている当該個人や法人の側からみると、自己の権利利益が保護されるという権利性を有することを意味することとなる。
この考えを押し進めると、実施機関は非公開情報を裁量的に公開できる余地があると解釈することに疑問が生じる。むしろ、非公開情報は公開を禁止したものと解することの方が無理のない解釈と言える。
したがって、「原則公開」の趣旨を徹底するためには、非公開情報を除き公文書の公開義務があることを明らかにする規定に変更するとともに、裁量的に公開する場合には、新たな規定を設けることとする。
【非公開情報と守秘義務との関係】
(1)情報公開条例は非公開情報の範囲を定めたものであるのに対し、地方公務員法第34条の守秘義務は公務員の職務上知り得た秘密を守るべき職員の服務規律を定めたものであり、両者は趣旨および目的を異にするものである。地方公務員法など行政機関の職員に守秘義務を課している規定における「秘密」とは、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護に値するものと認められるもの(実質秘)をいうが、実質秘の範囲は具体的に定められているとは言いがたい。
したがって、情報公開条例と守秘義務とはその対象となる情報については重なる場合が多いが、当然すべてが一致するものではないと考える。
(2)したがって、情報公開条例の非公開情報が守秘義務規定の対象となるか否かは個別具体的な事案ごとに判断を要するが、守秘義務規定の適用の問題については、情報公開条例に基づき適法に公開をしている限りにおいては守秘義務違反にはならないものとして取り扱う。
7 個人情報(第6条第1項第1号関係)
1.個人情報の規定の仕方については、個人識別型情報(※注釈1)とプライバシー型情報(※注釈2)があるが、現行条例どおり個人識別型情報とする。
2.個人識別部分を非公開にしてもなお個人の権利利益を侵害するおそれのあるものは、非公開情報として情報公開法と同様に新たに明記する。
3.例外的に公開する情報としては、現行条例を見直しし、「公領域情報」「公益上の義務的公開」および「公務員情報」に再編成する。
【説明】
プライバシーの具体的概念は、法的にも社会通念上も明確ではなく、個人の価値観によりその範疇も個人差がある。したがって、現行条例と同様、個人識別型情報を維持する。
なお、カルテ・反省文のように「個人識別部分を非公開としてもなお個人の権利利益を侵害するおそれ」のある個人情報については、非公開とする規定を明記する。
つぎに、個人情報に該当しても例外的に公開する規定については現行条例の規定を以下のように再編する。
(1)公領域情報 現行条例の「公表することを目的として作成し、または取得した情報」とは、解釈運用として
1 公表することを前提として個人から提供された情報
2 個人が自主的に公表した資料から何人でも知ることができる情報
3 従来から公表されており、かつ、今後公表してもそれが他人に知られたくない情報でないことが確実である情報とされている。
しかし、土地登記簿など区の機関以外に対して法令の規定により何人でも閲覧等を求めることができるとされる個人情報が区の保有する公文書に記録されている場合の取扱いについて微妙な問題が生じる。
このような問題に対し明確な回答を与えるためには、「法令の規定によりまたは慣行として公にされ、または公にすることが予定されている情報」に変更し、「公領域情報」として公開することを明記する。
(2)公益上の義務的公開
現行条例の「法令の規定により行われた許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、または取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの」が例外的に公開を義務づけた個人情報である。
しかし、公開する個人情報を許認可等に関連するものだけに限定する合理的な理由があるとは言えないこと、また、人の生命、健康、生活または財産と個人情報を保護する利益とを比較衡量して前者が後者を上回る場合には公開すべきであることを考慮すると、「人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に変更すべきである。
(3)公務員情報
「公務員情報」は、現在、当該公務員の職・職務内容の他に氏名も含め公開しているので、条例上非公開にできない情報として明記する。しかし、ストーカーなど特定職員への非難、攻撃など心理的圧迫および当該職員の権利利益を侵害するおそれのある場合には、氏名を非公開にできるものとする。
※注釈1:「個人識別型情報」とは、プライバシーを最大限保護するために、個人に関する情報で特定の個人が識別され得るものを一律非公開としたうえで、一定の類型のものをただし書きで列挙し、公開を義務づけるものである。
※注釈2:「プライバシー型情報」とは、一般に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人に関する情報で、「公開することにより個人のプライバシーを不当に侵害するおそれのあるもの」を非公開とする規定の仕方である。
8 法人情報(第6条1項第2号関係)
1.法人情報の非公開理由である「法人に明らかに不利益を与えると認められるもの」を、「法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に改め、条例上明確に規定する。
2.例外的に公開する「公益上の義務的公開」については、現行条例の趣旨を活かし文言の整理を行うものとする。
3.「非公開特約条項」は、新たに規定しない。
【説明】
現行条例の「明らかに不利益を与えると認められるもの」は、余りにも抽象的規定であり、具体的事例において適用する際、公開諾否の決定が難しい。そこで、「法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」というより具体的かつ客観性のある情報公開法の要件を準用することとした。
なお、「おそれ」の文言は、漠然とした抽象的おそれ(可能性)として捉えられがちであり、非公開情報の範囲が拡大される余地がある。判例では、単なる可能性では足りず、害することが客観的で明らかであること、即ち「法的保護に値する程度の蓋然性」があってはじめて非公開にできるものとする判断であるので、「害すると認められるもの」と表現する。
「非公開特約条項」とは、実施機関の要請に基づき公開しない約束のもとに任意に提供された情報の取扱いについて、その約束が合理的であったことを条件に非公開とする規定である。この非公開特約条項は「区との約束のもとに提供することを決めた情報提供者の期待と信頼」を保護法益としている。
しかし、公開するか否かの決定は、その情報が公になることについての具体的な支障から判断すべきであって、収集の方法や約束等の特殊な事情によって非公開とすることは「原則公開」の趣旨と相いれないものと考える。
また、提供した第三者の権利利益は、個人情報または法人情報としての保護が可能であり、さらに、区と提供した第三者の信頼関係と公正性の確保は、「事務または事業に関する情報」の該当性の問題として検討すれば十分と考えるので、「非公開特約条項」は新たに設ける必要はない。
9 審議、検討および協議に関する情報(第6条第1項第3号ウ関係)
説明責任の観点からみると、意思形成過程情報は、広く区民に公開されることが「区政への区民参加」を実現する上で重要な要素となる。このことから、非公開の範囲を明確にするため支障の内容を具体的に例示するものとする。
【説明】
意思形成過程情報は、区の機関内部、機関相互および区と国または他の地方公共団体との審議、検討、協議等に関する情報である。これらの情報の中には、行政としての最終的な意思決定の一段階であるため、公開することにより率直な意見交換への支障や区民に無用の混乱を生じさせるなどの情報も含まれるので、非公開情報とされている。
しかし、説明責任の観点からみると意思形成過程情報は、広く区民に公開されることが、区政への区民参加を実現する上で重要な意味をもつものである。 そこで、情報公開法と同様に支障の内容をより具体的かつ明確に規定することとする。
また、具体的支障の文言表現に「不当に区民に混乱を・・・」というように、「不当」を入れることにより、比較衡量の原則の徹底を図り、恣意的な非公開を抑制するものとする。
10 事務または事業に関する情報(第6条第1項第3号ア関係)
情報公開法の規定に沿って、区が行う事務事業をグルーピングした例示規定とし、非公開情報の明確化を図る。
【説明】
現行条例の「区政の公正または適正な執行を著しく妨げるおそれ」の要件は、包括的かつ概括的であり、非公開の範囲を決めるにあたり、分かりづらいものとなっている。
これを、より具体的、合理的なものとするために、事務事業を内容および性質等に従ってグループ別に分類し、典型的な支障を例示する必要がある。
(1)監査、検査、取締りまたは試験に係る事務
(2)契約、交渉、または訴訟に係る事務
(3)調査研究に係る事務
(4)人事管理に係る事務
また、現行条例の「その他これらに類する情報」は、その前に規定している事務事業が「制限列挙」なのか「例示規定」となるのか解釈上不明確である。したがって、事務事業執行情報に示された事業は典型的な支障を規定したものであり、これら以外の場合であっても、当該事務事業の性質上、公正または適正な行政運営に支障を生じさせると認められる場合は非公開となることを明確に表現する必要がある。
11 国等との協力関係維持に関する情報(第6条第1項第3号イ関係)
国等との協力関係維持に関する情報は現行条例から削除する。
【説明】
国等協力関係維持情報とは、区と国または他の地方公共団体との間における協議、依頼等に基づいて作成し、または取得した情報であって、公開することにより国等との協力関係を損なうおそれのあるものである。当該情報は、主として国との協力関係を損なわないようにとの配慮のもと、非公開情報としてきたものであるが、要件が抽象的かつ概括的であり、どうしても国等の主観的な考えが優先される傾向にあったといえる。
この度の地方分権推進の流れの中で、国との関係も垂直関係から水平関係へと変化しつつあり、当該条項を維持する理由は乏しい。
また、過去の請求で非公開にした事例は6件あるが、この内容をみると「審議、検討および協議に関する情報」または「事務または事業に関する情報」に該当するものである。
このため、非公開情報として維持する必要はなく、削除する。
12 公共の安全等に関する情報(第6条第1項第1号エ関係)
1.現行条例の「行政上の義務に違反する行為の取締り」の部分は削除する。
2.司法警察情報を「人の生命、身体、自由または財産の保護、犯罪の予防その他公共の安全および秩序の維持に支障が生じるおそれのあるもの」と表示し、独立条項とする。
【説明】
「行政上の義務に違反する行為の取締り情報」とは、食品衛生法違反事案の処理経過や建築基準法違反事案の調査結果など行政警察に関する事項が該当している。これについては、「事務または事業に関する情報」で対応できるため、削除する。
一方、「その他公共の安全の維持に関する情報」とは、施設等の詳細図面や警備資料あるいは薬物保管届など犯罪の予防や捜査等、平穏な社会生活を保持することなど司法警察に関する事項が該当する。この司法警察に関する事項については、犯罪の予防だけでなく、捜査関係事項照会書および回答書のように、発生後の捜査に係る行政情報や違法または不当な行為の通報、告発等に係る情報も存在する。
これらの情報が公開されることによって、犯罪捜査の遂行に支障を及ぼしたり、通報者、告発者等の生命、身体等の安全が脅かされる事態を回避する必要がある。
そこで、「人の生命、身体、自由または財産の保護、犯罪の予防その他公共の安全および秩序の維持に支障が生じるおそれのあるもの」と表示し、独立事項とする。
13 法令秘情報(第6条第1項第4号関係)
現行の「法令」の他に、新たに、法定受託事務に関する国等の「指示」について検討を行ったが、現行条例どおりとする。
【説明】
地方自治法の改正により、地方公共団体の処理する事務は、自治事務と法定受託事務となった。
そこで、法定受託事務における国等の指示について、法令秘と並列し、非公開情報として独立して規定するか否かを検討した。
法定受託事務は、自治事務と同様に、区の事務事業として区の責任で自律的に処理するものとされている。そのため、法定受託事務に係る指示で非公開を国等から求められた場合、区がその指示に従うか否かについては選択の余地があり、内部の手続きを経て決定するものである。したがって、公開するか否かの諾否決定についても、区の裁量を自ら否定すると想定されるような規定を定める必要はないと判断した。
国等の非公開の指示があった場合には、国等との協議に関する情報として「審議、検討および協議に関する情報」、または「事務または事業に関する情報」の中で個別具体的にその内容を検討し、諾否を決定することが適当であるとの結論に至った。
14 公益上の理由による裁量的公開=新規
情報公開法と同様に、公益上の理由による裁量的公開の規定を新たに設ける。ただし、法令秘情報には適用しない。また、個人情報については慎重な取扱とする。
【説明】
「公益上の理由による裁量的公開」とは、非公開情報に該当し公開できない情報について、実施機関が高度な行政的判断により裁量的公開を行うことができることを規定したものである。
非公開情報として保護される利益と公開することによる公益性を比較衡量して、なお高度な行政的判断により公益性を優先して裁量的に公開すべき具体的事例は、現段階では想定できないので、検討委員会は、この規定の必要性について検討を行った。
その結果、
(1)「非公開情報を除き、公開しなければならない。」という規定に変更することとした趣旨(「6 公開・非公開の枠組み」を参照)からすれば、非公開情報の規定により保護される利益に優越する公益上の理由があると認められるときに、公開する場合の根拠規定を設けることが必要であること。
(2)個人情報および法人情報の但し書規定による「人の生命、健康などの個人的な法益の保護」のために必要な場合の開示義務に比較し、より広い社会的、公共的な利益を保護する特別の必要性のある場合の対応規定が必要であること。
以上の理由により、情報公開条例の法規としての完全性を確保するため、当該規定を設けることとした。
濫用の防止策として、
(1)裁量的公開を行政処分として位置づける。
(2)個人情報および法人情報の裁量的公開を行う場合には、事前に意見聴取等を実施機関に義務づけするとともに、公開に当たっては決定から公開するまでに相当の期間を設け、第三者の不服申立てへの便宜を考慮する。
(3)法令秘情報については、裁量権を行使できないので適用除外とする。
(4)個人情報については、その性質により慎重な取扱が望ましい。
(5)適用にあたっては、審議会への報告等を検討する。
15 存否応答拒否情報=新規
1.情報公開法と同様に、存否応答拒否の規定を新たに設ける。
2.濫用および誤用の防止として行政処分に位置づけ、理由を付記する。
3.個人情報保護条例との整合を図る。
【説明】
存否応答拒否情報とは、特定個人の病歴、所在の探索あるいは犯罪の内偵に関するものなど公文書の存否を答えるだけで、非公開情報を公開したと同様の結果となる時は、当該公文書の存在を明らかにしないで公開請求を拒否することができる規定である。
この規定は、もともと非公開情報に該当していることが前提であり、非公開の枠を広げるものではない。
また、個人情報保護条例において同様の規定を設けているので整合を図らないと、自己情報開示請求の際に存否応答を拒否された情報が、情報公開条例ではその内容が判明されてしまうという齟齬が、実際の運用において生じるおそれがある。
したがって、情報公開法および個人情報保護条例と同様に、新たに設けることとする。
ところで、存否応答拒否情報は、実施機関にとっては多用される危険が常に付きまとうので、濫用や誤用を防ぐため、行政処分として位置づけ、決定にあたっては理由を付記することを義務づけるとともに、不服申立ての対象として取り扱うこととする。
16 部分公開(第6条第2項関係)
現行の一般的な部分公開の規定に加え、「個人識別性のない部分の公開」を新たに設ける。
【説明】
(1)電磁的記録への対応
現行条例の部分公開の規定は、請求の対象となった公文書に公開部分と非公開部分が混在している場合には、原則として、それを区分し、前者の部分を公開するよう実施機関に義務づけしたものである。
今後新たに、磁気テープやフロッピーディスクなどの電磁的記録が公文書の範囲に含まれることにより、公開部分と非公開部分の分離が技術的に困難な場合や分離が技術的に可能であっても多大の費用がかかる場合が想定される。このような場合には部分公開の義務がないこと(基本としては、紙媒体に出力したものに通常の部分公開のマスキングを行い、閲覧または写しの交付で対応)を明確にする必要があるので、情報公開法の規定と同様の定めとする。
(2)個人識別性のない部分の公開
個人情報のうち、氏名など個人識別性のある部分を除けば、公開しても個人の権利利益が侵害されるおそれがないと認められる場合、これまでも、氏名など個人識別性のある部分を除いて公開する運用を行ってきた。
このような取扱いを、情報公開法と同様に、条例上明記することとする。 なお、個人識別のある部分を除いても個人の権利利益を害するおそれのある、カルテや反省文と言った個人の人格と密接に関連するもの、あるいは未発表の論文などの著作権上の利益に関するものは非公開とする。
17 公開請求の手続
1.公開請求書の基本的記載事項を新たに条例に明記する。
2.請求書に形式的な不備がある場合の補正手続を新たに規定し、補正に要した日数は法定の期間に参入しない。
3.「請求書の受理」の概念から、行政手続条例の規定に適合した「到達主義」に変更する。
4.ファクシミリによる請求は現在認めているが、電子メールによる請求は今後の検討課題とする。
【説明】
現行条例では、公開請求書に記載すべき事項は基本的事項を含め規則に委ねているが、公開請求手続の基本となるので条例事項とすべきである。
現行条例には、補正手続(※注釈1)は定められていない。そこで、公文書公開制度を分かりやすく、円滑かつ適正に実施するためには重要なものであるとの判断から、新たに補正手続を明記し、補正に要した日数は法定の期間に算入しないこととする。
また、現行条例の解釈運用基準によると、請求の受付は「受理」の概念(※注釈2)を採用しているが、行政手続条例と同様に「到達主義」(※注釈2)に変更するものとする。
したがって、郵送の場合には、情報公開課に到達しなくても文書業務係で収受した日の翌日から起算が進行することとなる。 請求の方法については、運用として、郵送のほかファクシミリによる請求も認めている。しかし、電子メールによる公開請求については、庁内におけるインターネットの整備状況などと密接な関連性を持つので、実施可能な方向で今後の検討課題とする。
※注釈1:「補正手続」とは、公開請求書の記載すべき事項に形式上の不備がある場合、請求者に対し、補充訂正を求めることができる手続をいう。
※注釈2:請求書の受理とは、公開請求書に形式上の不備がある場合には期間の計算などの法的効果を生じる適正な請求とは見做さないこと。したがって、形式上の不備が是正された時点から請求としてのあらゆる法定効果が生じるとする考え方。
これに対し、「到達主義」とは、原則として、区役所等の公務署に請求書が到達した時点から、請求としてのあらゆる法定効果が生じるとする考え方である。
18 文書不存在の取扱い
個人情報保護条例との整合および現行条例の運用を明確化するため、文書不存在の決定を「行政処分」として明確に位置づける。
【説明】
現行の条例の解釈では、公開請求に係る公文書が不存在である場合の取扱いについては、「文書不存在」を審査会の諮問対象としており、行政処分にあたると考えられる。
そこで、不存在の決定をする際には、運用として理由付記も行っている。 一方、個人情報保護条例は、文書不存在を行政処分として明確に位置づけしていることから、整合を図ることが必要である。
したがって、個人情報保護条例との整合および現行条例の運用を明確化するため、条例上行政処分として明確に位置づける。
また、理由付記を義務づけるとともに、不服申立ておよび行政訴訟(抗告訴訟)の対象となることも明確にする。
19 理由付記(第9条第5項関係)
非公開の場合等における理由付記は、現行条例どおりの表現とする。
【説明】
理由付記(※注釈1)は、適法に非公開とするための要件である。したがって、理由を付記しない場合または付記された理由が不明確な場合の非公開決定は、不服申立ておよび訴訟の提起があった場合には、瑕疵ある処分とみなされる。
理由付記の法的機能としては、
(1)実施機関の判断の恣意性を抑制すること
(2)不服申立ておよび訴訟の提起に便宜を与えることなどが挙げられる。 したがって、この機能を発揮する必要な範囲内で理由を記載すれば、理由付記としての有効性が認められると考える。
また、現行条例の運用の中でも、理由付記の上記の機能および判例との比較検討の結果、実際上の齟齬が生じていないので、現行どおりの表現とする
《参考》「東京都情報公開条例第13条第1項(理由付記等)」
実施機関は、第11条各項の規定により開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しないときは、開示請求者に対し、当該各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。この場合において、当該理由の提示は、開示しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が、当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。
※注釈1:理由付記とは、非公開(部分公開を含む。)あるいは不存在など不利益処分として書面により決定通知をする際、決定理由を記載すること。
具体的には、非公開事項の指摘とその具体的理由(簡潔な文章で表現)および適用条文を記載すること。
20 第三者保護に関する手続(意見書提出の機会の付与等)=新規
公文書に第三者に関する情報が記載されている場合において、公益上の理由により公開するときは、公開決定に先立ち、情報公開法と同様な当該第三者に意見書の提出機会を保障するなどの手続に関する規定を新たに設ける。 なお、公開を決定するときには第三者に通知すること、公開決定から公開までに、相当の期間(2週間)を置くことを明記する。
【説明】
現行条例の取扱いでは、公開請求に係る公文書に第三者である個人のプライバシーや企業秘密が含まれる場合は、原則非公開となる。しかし、企業秘密の判断等を実施機関は、常に適切に行える訳ではなく、法人情報の「明らかに不利益をあたえる」か否かの適切な判断のために、必要に応じて当該第三者から意見を聞くことができるとしている(解釈運用基準)。
しかし、意見聴取手続には相当の期間が必要であり、法定の期間を延長せざるを得ないこともある。条例上の根拠もなく期間の延長を行うことは公開請求者への説得に欠ける面もある。一方、第三者の情報を公益上の理由から公開すると、当該第三者は不利益を受けることが十分予想される。
また、新たに「公益上の理由による義務的公開」(個人情報および法人情報に適用)および「公益上の理由による裁量的公開」を盛り込むことを考慮すると、第三者の権利利益と公益性との調整を図る手続を条例に明記することは必要であるとともに、見直しの基本的方向である「原則公開に基づく公開枠の拡大」に資することとなる。
そこで、このような第三者保護のための適正な行政手続の保障という観点から、不利益を受けるおそれのある第三者に、事前に意見書提出の機会を保障するとともに、第三者が公開に反対する意見書を提出した場合において、公開決定した旨および公開の実施日等を通知すること、および公開決定から公開の実施まで相当の期間(2週間)を置くことにより、事後における争訟の機会を確保することとする。
なお、書面により公開反対の意思表示をした第三者が、公開に不服があるときは公開の実施前に異議申立てと同時に、開示の実施を仮停止する「執行停止の申立て」をすることが当然に予想される。この場合における「執行停止」の申立先は、不服申立先と同様に当該決定をした実施機関になると考える(行政不服審査法第48条で準用する第34条)。
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