地域と共にある練馬の学校
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更新日:2010年2月1日
地域と共にある練馬の学校 【通いたい、学びたい、共に過ごしたい】
平成15年3月17日
練馬区教育委員会
教育長 薗部 俊介様
21世紀の練馬の教育を考える懇談会
会長 天沼 英雄
「地域と共にある練馬の学校」について
21世紀の練馬の教育を考える懇談会は、平成13年10月29日に練馬区教育委員会教育長から諮問を受けて以来、懇談会19回を開催し、鋭意検討を行ってまいりました。
このたび、標記の件について懇談会として考え方をまとめましたので、別紙のとおり答申します。
これからの学校はどうあるべきか
1 現状と課題
今日、学校教育には子どもたちに幼児期からの発達段階に応じ、「知・徳・体」をしっかりと身に付けさせること、すなわち「確かな学力・豊かな心」の実現が求められている。子どもたちの「知・徳・体」の相対的な低下が懸念されたり、いじめ、不登校、引きこもりといった状況の解決も十分に進んでいるとはいえない。国=文部科学省(以下「文科省」という。)が進める教育改革諸施策は、「学力低下批判」の反面、「自治体や民間の多様な主体的取組」を生んでいる。こうした状況にあって練馬区では、学校においては校長を中心に授業指導の工夫や研究・充実に努め、練馬区教育委員会(以下「区教委」という。)では学校をバックアップする諸施策を講じることで、魅力ある学校・学ぶことが楽しい学校を目指しているが、課題も山積している。
「確かな学力・豊かな心」の実現には日々の教育現場である学校、仕組みをつくる区教委、しつけに責任をもつ家庭、子どもたちの成長を見守り助ける地域間相互の連携が不可欠である。学校では保護者や地域への情報提供・発信、学校評議員制度、授業への地域人材活用、PTA活動など多様な連携を積極的に図る努力を続けているが、家庭や地域の教育力低下等を背景に多くの問題を抱えている。
区立学校は、区内に満遍なく配置されていることから防災避難拠点への指定が象徴するように、貴重な公共の地域資源である。このため学校の教育活動に支障を来さない範囲での活用=学校開放事業や福祉施設の設置、会議室等の目的外利用=が行われている。放課後も含め地域資源としての学校活用の可能性は、「地域コミュニティの核」ともなりうるほど大きなものがある。しかし、完全学校週5日制によりすべての土曜日が休業日となったにもかかわらず、管理上の問題などもありそこまでには至っていない。
2 懇談会での論議経過
(1)子どもたちは確かな学力をどのように身に付けるか
教員は、よりよい授業を展開するために互いに授業を見せ合うことで資質向上を図るなど、自らの意識改革を図ることが必要である。
少人数学習の実現や習熟度別学習等の導入など学ぶ意欲を向上させるための条件整備が必要である。子どもたち同士が学び合い、教え合う環境づくりや、中学校での子どもの教員選択制、飛び級、自由意思による学年のやり直しも検討してよい。
また、子どもの生活の基盤は家庭にあることから、家庭の教育力を高めるための支援、具体的には幼児期の子育て段階からの行政支援=子ども関連組織の連携を図った支援=が必要である。
(2)地域と学校の真のパートナーシップを実現するにはどうするか
家庭、地域と学校の連携協力の仕組みづくりを考える必要がある。またPTA強化策としての情報交換や保護者同士が知り合う機会の設定等も、学校から働きかけることが必要である。
地域に開かれた学校にすることが必要である。施設の地域利用・地域人材の活用の仕組みづくりもぜひ必要であり、そこでの調整役等についても十分な論議が必要である。
学校こそ地域の核になりうるものであり開放されるべきものである。子どもは地域の様々な行事への参加を通して、社会性や豊かな心を育んでいく。学校施設はこれらに活用されるものである。
3 学校が目指すべきもの=提言に代えて
・子どもにとっての“練馬の教育”
練馬区の学校はこれまでも、これからも「子どもが主役」である。子どもが毎日自分らしく過ごせ、様々な経験ができる学校でありたい。子どもが「通いたい、学びたい、共に過ごしたい学校」を目指す。
キーワード⇒学びが楽しい学校・人とのかかわりが豊かな学校
・保護者にとっての“練馬の教育”
保護者にとって地域の学校である区立学校は、子どもを毎日、安心して通わせられる存在でなければならない。保護者自身も関心をもち、かかわりをもち続けたいと思い、そして実際に様々な形でかかわれる学校であるべきである。また、保護者は学校と連携をもちつつも家庭自身の役割をしっかり担うべきである。基本的な生活習慣や社会生活に必要なモラルなどは、家庭でも責任をもって育てる。
キーワード⇒共に手を携える学校・連携と役割分担の関係づくり
・地域にとっての“練馬の教育”
地域は地域の教育力の低下を嘆く前に、その再生に向けて地域住民すべてが地域課題に目を向け、子どもの状況に関心をもつべきである。子どもは「未来の宝」である。子育て中であろうとあるいは子育てが終わっていようと、地域の子どもを保護者や学校に任せきりにせず、地域=広い意味では世間=で見守る役割が不可欠だからである。
キーワード⇒地域で育てる子ども・地域の核としての学校
・学校に求められる“変革”
区立学校は以上のような存在意義を目指して、校長始め教職員全員がそれぞれ何をなすべきか、全体として何を実現すべきか、置かれている状況の中で改めて考えることが必要である。学校は、子ども・保護者・地域の信頼をさらに深めるべくさらなる努力をすべきである。また、子どもと教員とが共につくる学校づくりを目指す。
キーワード⇒公共施設としての意識改革・子どもが主役の授業・情報の公開・地域との共生
・教育行政に求められる“変革”
区教委は学校の方向性を見極め、学校への援助、指導の仕組みづくりを積極的に行うべきである。区立学校が、子ども・保護者・地域からの信頼感を失っていくことは、区教委としてその存在の否定につながるものであり、危機感をもって立ち向かうべく、様々な施策を打ち出すべきである。
キーワード⇒地域と共にある練馬の学校
以上
特色ある学校づくり
学校規模と学区域(自由化・選択制)のあり方
1 現状と課題
通学区域制度は、教育の自由化、規制緩和、分権化などを背景にしながら、大きく変わりつつある。
保護者や子どもたちの意向に配慮し、制度の弾力的運用や学校選択の機会拡大への制度改革が進んでいる。23区においても、過半数を超える区で様々な形での通学区域の弾力化や学校選択制の実施、あるいは実施に向けての検討が行われている。
これらの背景には、現在の黙っていても子どもたちが通ってくる囲い込み的な制度を改め、区立学校が互いに切磋琢磨し共に教育の質を高め合っていく努力が、保護者や子どもたちの多様な要望に応える魅力ある学校づくりにつながるという考え方がある。
これに対し、自由化や選択制は、地域との結び付きを希薄化し、学校の序列化や教育の規模や質の格差を生むという逆の意見もある。
ひるがえって、練馬区の現状をみると、小学校69校、中学校34校の現在の通学区域が定着してから12年を経過したが、児童数が急増する大泉、関町周辺のような地域がある一方、光が丘のように児童数が大きく減少している地域があるなど、学校規模に地域間で大きな格差が生じている。
また、指定校変更制度による通学区域の弾力化も進み、特に中学校においては、一定の理由があれば隣接校へはほとんど通学できるという状況となっている。
さらに、私立学校へ就学する子どもも年々増加し、保護者からみれば私立学校への進学と通学区域の弾力化による他の学校への入学が、共に選択肢となる状況が進行している。
通学区域の自由化と選択制は、概念的には異なるものであり、完全自由化を実施している自治体はないことから、当懇談会では、主として学校選択制を中心に論議した。このため用語としては、以下「選択制」と呼称することとする。
2 懇談会での論議経過
(1)なぜ、選択制か
懇談会の議論の中で終始、論点となったのは、何のためにこの制度を導入するのか、選択制のねらい、必要性は、何かということである。
まず、保護者の選択基準は風評に流れたり有名校志向であったりして曖昧で不明確である、練馬区の現状でそこまで必要なのか、選んでもらうための学校PRに走るのは筋違い、ということならそもそも次元が違う、学校の活性化ならもっと他に方法がある等々、その意義に対して疑問ないし慎重な考え方が提起された。
これに対し、現在の義務教育の閉塞感を解決するためには選択制は必要であり、実施した上でセーフティネットを張ればよい、価値観も選択肢も多様化している中で個性や魅力ある学校をつくっていくためには競争原理が必要である、学校を活性化するための一つの有効な手段である等々、積極論ないし賛成論も主張された。これらの議論は、この制度がもつ諸刃の剣のような性格を表している。
いずれにせよ、選択制は、保護者や子どもたちの希望に応え、新たな制度の導入によって区立学校の活性化を図ろうとするものである。しかし、練馬区においてこの制度を実施するためには、導入の事前にあるいは同時並行的に、検討すべき様々な課題があることが指摘された。
(2)選択制を実施する前に
今までの指定校変更制度は、相応の理由がなければ通学が決められた学校を変えることができなかった。それを何らかの形で、希望があれば他の学校に通学することができるシステムにしていくことは、時代の流れといってもよい。
そのためには、学校を選ぶ材料をたくさん用意する必要がある。子ども本人、保護者、地域の方々、校長、教員の各々が、十分な量と質の高い情報を共有していることが求められる。その一つとして、他区の実施例や実施後の効果を十分検証すべきである。保護者や子どもたちが何を拠り所に判断しているのか、その結果としてどのような効果が現れているのか、不登校が減少したという区もあるようだが、これについても十分な精査が必要であろう。
本当に選択ができるというためには、選択する側、される側双方にとって、準備のための時間が必要であり、両者とも選択ができる、あるいは選択に応えられる情報と資質を備えることである。
選択に応えられる学校となるためには、学校自身はもとより、区教委においても学校と一体になって、地域の方々が学校に関心をもつような取組が必要である。
各学校や区教委は、情報を積極的に地域やPTAに提供するとともに、地域も総体として学校にかかわりをもたなければならない。それなしに、選択制のみが先行することは混乱を招くであろう。
(3)練馬区における選択制
選択制を論議するに当たっては、都心区などと異なった練馬区の地域特性を考慮し、「地域の中の区立学校」、「地域と共に歩む区立学校」という視点を、特に強調しておきたい。
このような意味で、地域とのかかわり、通学距離や交通安全、学校規模の地域間格差等々を考えると、小学校において選択制を導入することは、慎重に考えざるを得ない。小学校の通学区域が果たすコミュニティ的機能を否定することはできないからである。本区では、現在の学校規模の地域間格差をどうするかという検討を先に行うべきであろう。
一方、中学校については、条件整備が比較的容易なように思われる。中学校生徒の行動範囲、生徒自身の意思の尊重、通学区域の広域性などから是認しうるのである。
ただし、近隣校を選択することが多かったという先行区の実施例をみても、現行の指定校変更制度を、さらに改善・弾力的運用することも検討すべきである。
3 提言
(1)地域と共にある区立学校を
区立学校の存立基盤は、地域であり、「地域と共に歩む学校づくり」という視点を忘れてはならない。選択制は、本来、この「地域と共に」という視点を危うくする要素を内包しており、導入においては、十分留意して検討すべきである。
このため、現状では、小学校においては、この制度の導入は慎重に考えることが必要であり、まず、学校規模の地域間格差の解消に向けて取り組むべきである。
(2)学びが楽しい区立学校を
区立学校は、通学区域制度を固定的にとらえるのではなく、区域外からであっても、子どもたちが入学したいと思い、学ぶことが楽しい魅力ある学校づくりに、それぞれの学校が努力すべきである。また、区教委もそのための必要な支援を行う必要がある。
中学校については、学ぶ意欲の広がりに応じて、選択制を導入することの意義は大きい。実施に当たっては、マイナス面にも配慮した十分な条件整備を図るべきである。
(3)特色ある学校づくりと十分な情報の提供を
学校および区教委は、実施に当たって保護者や子どもたち自身の意向を十分受けとめるとともに、選択の理由が各学校の教育の方針・内容や子どもたちの要望と学校との適切な対応などによるよう、特色ある学校づくりに努力しなければならない。
また、判断材料としての十分な情報提供とその共有化に努め、「選択することを強いる」結果になることのないようにすべきである。
以上
一貫教育
1 現状と課題
一貫教育は、現状の6・3・3制学校制度における異校種間の教育指導の不連続・段差の解消と子どもの個性をより重視した特色ある教育の展開、子ども・保護者の多様な選択の幅を確保するものとして、現在、文科省や各都道府県区市町村教育委員会で検討されているものである。
従来から、一部の国立や私立の学校では、中高一貫教育が実質的に行われているところであるが、公立学校に関しては、平成10年の学校教育法改正により、修業年限6年間の中等教育学校が可能となった。
東京都教育委員会は、平成22年度までに10校の都立中高一貫教育校を決定したが、いわゆるかつての進学校が多く、練馬区内では有数の進学実績がある大泉高校が指定された。東京都教育委員会の決定は、その背景に都立高校改革の一環として、統廃合や単位制高校の設立を含め、魅力ある都立高校づくり、都立高校の教育の一層の充実をねらったものと考えられる。
各区の状況をみると、品川区教育委員会が小中一貫教育校の設置を決定した。また、千代田区教育委員会は都立九段高校の移譲を受け、区立中学校との中等教育学校を開校することを、東京都教育委員会との間で平成14年10月に合意した。現在、設立に向けた準備が具体化している。
練馬区においては、平成12年に設置した「練馬の教育21推進検討委員会」で、区立の幼稚園から高校までを視野に入れた一貫教育校を光が丘地区に設置する提言をしたが、その後の具体的な検討は進んでいない。また、施設設備を共有したり、隣接したりしている小中学校が多い光が丘地区であるが、十分な連携については、今後の実践を待つところである。
一方、ほぼ同一の学区域である下石神井小学校と石神井南中学校が、平成14年度から文科省により「小中連携教育実践研究校」の指定を受け、小中一貫した教育課程の編成や基礎的・基本的な学力の定着を目指した教科指導、児童・生徒間交流の促進等、連携を深める実践的な研究を進めている。
当懇談会は、このような練馬区の状況を踏まえつつ、時代の潮流を見据えた一貫教育のあり方について検討を行った。
2 懇談会での論議経過
国、都、他区での一貫教育のねらいや実施状況を確認した後、以下の議論を進めた。
(1)一貫教育に対して慎重な意見
まず、一貫教育について区民の要望があるのか把握すべきである。中高一貫教育であれば、友人関係が6年間固定化しかねない。このことは、青年期に当たるこの時代の生徒には、よい面ばかりとはいえない。また、現在の国私立の実質中高一貫教育は、進学重視がほとんどであり、区立学校で実施するとすれば、進学問題については慎重であるべきである。一貫教育校として特色を打ち出す際、私立学校の「建学の精神」に基づく実践と比較すべきではない。
一貫教育のメリットとしての教育課程の弾力的運用こそ大事であり、形態上の一貫教育校の設立よりも実質的教育内容の連携の推進に視点を当てるべきである。
(2)一貫教育に対して積極的な意見
中高一貫教育は、高校受験がなく、教科学習、行事、部活動等の継続性が確保されるとともに柔軟性とゆとりをもって取り組める。例えば、6年間を3年間の前期後期で考えるのでなく、2年間の基礎、応用、選択の各課程とするなど、一人一人の能力・適性や興味関心に応じた特色ある教育課程の編成にも取り組める。また、生徒にとっては、6年間に自分づくり、自分探しにじっくり取り組め、成長発達に大きな効果が期待できる。また、区立学校においても、生徒に対して制度上多様な選択の機会を設けることは、機会均等の面で好ましいことである。
(3)一貫教育推進に当たってその他の意見
いずれの一貫教育校も区内全域から通学希望できるようにするとともに、多様な教育の場、多様な選択の場を可能とする視点から、1校のみに留まるべきでない。
実施の検討に当たっては、区民も参加した実施検討委員会を設置し、独自のスタンスから新しい学校教育の多様な姿を外部に発信していくべきである。
3 提言
(1)理念の明確化を
理念目的が不明確なまま区立中高一貫校を目指すことには、慎重であるべきである。まずは、長期のスパンで教育を展望する必要性と理念を明確にすべきだろう。また、子どもの発達段階を踏まえた、幼児期から中等教育までの一貫教育の検討が望まれる。(※注釈1)
(2)実質的な教育の一貫性
一貫教育の目的は異校種間の途切れをなくし、継続的指導を可能とすることである。また、教育課程の連携、教員間の連携、子ども同士の交流などを密にし、結果として既存校も含め、特色ある魅力ある学校を実現することにある。この面で区立小中学校間の連携を積極的に進めることは、実質的な一貫教育の実現ともいえる。(※注釈2)
以上
※注釈1:旧キャンプ朝霞の都立大泉学園高校は廃校(都立大泉北高校との統合)が決定しているが、区内の公有財産を守る観点からも大泉学園桜中学校との一貫教育校の検討は理念目的をはっきりさせた上で必要ではなかろうか。また、大泉学園高校との一貫教育校が施策化されない場合、同校跡地の練馬区としての活用は別途考えるべきだろう。
光が丘地区は児童生徒数の減がいよいよ顕著であり、近い将来に学校統廃合が課題となるものと思われる。光が丘地区は幼稚園が区立であることもあり、魅力づくりとして都立高校2校(光が丘、田柄)を加え、区立幼小中高一貫教育校として検討することは、新たな「地域と共にある区立学校づくり」として有効であろう。
※注釈2:配置位置や構造から一部施設の共同利用が可能となっている光が丘地区(小学校9校、中学校4校)、大泉学園桜小・中学校は施設・設備・校地のメリットをより活かし実質的な小中連携の強化を図るべきである。また、既成市街地に隣接して配置されている小・中学校(旭丘小学校・旭丘中学校、田柄第二小学校・田柄中学校、旭町小学校・豊渓中学校、北原小学校・谷原中学校、泉新小学校・三原台中学校、上石神井小学校・上石神井中学校、大泉小学校・大泉中学校)も立地を活かし、子どもの発達に沿った実質的な一貫教育の推進を期待するところである。
この意味では、平成14・15年度小中連携教育実践研究校である下石神井小学校と石神井南中学校の研究成果に大いに期待するところである。
学校の個性化、魅力づくり
1 現状と課題
学校の個性化、魅力づくりの目的は、子どもがいきいきとして通う区立学校を目指すことにある。しかし現状は、区立学校には十分な活気がないという指摘や、地域からみると各学校が何をもって特色としているのかわかりにくいという指摘がある。
学校の特色は学校から地域に発信されるが、子どもがいきいき通える学校の実現がまず前提であり、保護者も地域も認め求める教育ビジョンを明確にすることが大切である。そのために、学校は教育の実態と成果に責任と自信をもち、積極的に地域に公開し発信しなければならない。ホームページ等で情報公開していくという手段もある。
学校の個性化、魅力づくりというと、総合的な学習の時間や平成14年度の新規事業である「特色ある学校づくり推進事業(校長の予算に関する自由裁量枠の拡大)」が取り上げられるが、この他にも学校の個性・魅力は多様にある。各学校は、多様な取組の実態を明らかにして、自信をもって保護者や地域に理解と協力を得る工夫が望まれるが、まだ不十分な状況にある。
これまで区立学校は個性を強く出し、魅力をアピールすることについては消極的であった。そこで、区立学校間で刺激しあい切磋琢磨する仕組みが必要であるという考えから学区域の自由化に踏み切ったところもある。しかしその一方で、区立学校は地域の学校として、学区域の自由化には慎重であるべきであるという意見もあるが、学校の活性化と特色づくりには積極的な対応策が求められる。
2 懇談会での論議経過
(1)現状の取組への評価
特色ある学校、それは何をやっているかではなく、何を大事に育てたいとしているかが重要なのである。
幼稚園では、家庭や地域で子どもをどう育てたいかという点を重視し指導している。
保護者を主役にした「保育ボランティア」等の特色ある活動を展開している。保護者のニーズに応えしかもビジョンをもった取組こそ大切である。
個性化、魅力づくりには、地域人材や教育資源の発掘と活用が大切である。現状は、情報の連携やネットワークづくりが不十分である。ボランティア等に人材が欲しいとき、学校情報を地域に発信することをまず考え、協力を求めるようにしたい。
総合的な学習の時間は特色づくりを行いやすい活動の一つだが、学校間で互いの実践の情報を公開し、人材や教育資源を共有化することが大切である。
(2)現状から導き出される方向性
学校の教育活動の個性化を図るためには、教員の能力・特性を活かすことが重要である。校長のリーダーシップのもとに、教員一人一人が、目指すビジョンに向かって共働して力を発揮していく。子ども、保護者、教員の協同関係の上に学校の個性が出来上がっていくと考えられる。
区立学校は、大切にしたいこと、この点を守りたいということを特色としたい。子どものために何ができるかということを考えていくことが、最も大切である。
特色ある学校づくりは、広い視野の上に立ち、継続的に取り組むものである。同じ校区内の小学校と中学校の直接的な交流を通じて、同じ特色をもつことができれば、よい成果が生まれるであろう。
特色ある学校づくりの前提として、学校の目指す目標や子どもについて、学校内で見つめ直すことが重要である。何を育てたいのかはっきりさせ、学校の立場から保護者や地域に何を求めているのかを明らかにしたい。豊かな心や人間関係づくり等の社会性の育成、学力向上、地域の緑化運動のボランティア活動の推進等、様々な特色ある活動が工夫できる。
3 提言
(1)子どもがいきいき通える学校づくり
何のための個性化、魅力づくりかを区立学校の原点に立ち考えれば、それは子どもがいきいきと通える学校の実現のためである。子どもが元気に楽しく通える学校、保護者が安心して通わせることができ、子ども一人一人を大切にしてくれる学校、地域の方々が関心とかかわりをもとうとする学校づくりを目指す。そのために校長の指導力のもと、学校が一丸となって子どもの教育に取り組んでいくためのビジョンと具体策をもつことが必要である。
(2)地域への情報の発信と受信
個性、魅力とは学校が大事にしているものであり、長いスパンの中で地域と共につくりあげ継続、維持していくべきものである。学校が「本校の特色・教育目標」として大切にするものを、地域や保護者と共に時間をかけてつくりあげていくことから始めたい。また、学校は、地域、保護者からの要望など何を学校に求めているのかを知る工夫も必要である。それには、学校が積極的に情報を地域や保護者等に発信・公開することから始めたい。同じ地域にある小学校と中学校等の連携を具体的に推進していくことは、個性化、魅力づくりのために有効な策と考えられる。
(3)教員の資質向上を
子ども一人一人の個性を引き出し、輝かせることが教員の役割である。教員はそのため自己研鑽に励むべきであり、校長は一層のリーダーシップを発揮すべきである。
また、区教委は、教員の資質向上のため、研究への取組支援、研修の充実などのバックアップを一層行う必要がある。
以上
開かれた学校づくり
登校支援対策
1 現状と課題
不登校の子どもの数は減っていない。子ども総数が減少していることから、出現率は増加傾向にある。練馬区でも、問題は改善されているとはいい難い。
不登校を原因に基づいて分類することは可能であるが、様々な原因が絡み合った型=複合型が増えている。原因が特定しにくいことから対応が難しく、学校への復帰事例は多くはない。
近年、小学校から引き続いて不登校を続けるケースが増えている。小学校段階からの専門的な、よりきめ細かい対応が求められるが、中学校での対応と比べると、カウンセラーの配置など十分な対策がとられていないのが現状である。
対策としての総合教育センター(以下「センター」という。)での適応指導教室(小:フリーマインド、中:トライ教室)は、センター通いが可能な子どもを中心に対応しているが、児童で約30%、生徒で約10%以下の利用率であり、特に中学生の参加率が低い。
現在、トライ教室では、不登校による学習空白が生じる不安への対応策として、学力補充の指導が一定の成果をもたらしている。しかしながら、対象となる生徒が限定されてしまうことの原因の一つとして、カリキュラムが教科中心で柔軟性に乏しいことがあげられる。不登校の背景の多様性、複雑性を考えたとき、さらにトライ教室がその多様性に適応した柔軟な場を目指す必要がある。
保護者への支援は大切な対応策であるが、保護者同士が情報の交換をする場の設定はやっと緒についたところであり、これまでは、センターでの講演会の一環として試行されている。
特に深刻な「引きこもり」の子どもへの対応は、これまで十分には行われていない。
他の自治体では大学生を派遣するなどにより実績を上げているところもあり、練馬区でも新年度に同様の新規事業(ネリマフレンド事業)を予定している。
民間支援機関が行政とは別に一定の実績を上げているが、区教委は学校復帰を主たる目標とする立場から、それらとの連携は十分ではない。
不登校の相談が約半数を占めるセンター教育相談室は、練馬駅南の旧練馬都税事務所に移転し、光が丘との地域分担を実現した。しかし、関町・北町・大泉地区等については、相談者の利便性を考慮した対応が課題である。
2 懇談会での論議経過
原因は百人百様、かつ特定が難しい。ゆえに教育現場だけでの対応では十分でなく、解決のためには多方面の協力が必要である。また、家庭への支援・協力なくして解決は困難である。
近年、価値観の変化か「明るい不登校」が増え、学校に復帰せねばと悩むことが薄れている事例もみられる。このような状況をどのように考えるべきか、検討が必要である。
不登校をよくないことととらえれば、解決状態は登校することであるが、しかし、「学校に行かない」ことも選択肢の一つととらえれば、学校以外の受皿でのかかわりも、社会との関係をもつのであるから一歩前進である。多様な教育の機会として、学校への復帰だけではなく、民間支援機関へ通うことを認知することも、解決策の一つとして考えてもいいのではないか。
区教委が新規事業で実施する予定の「ネリマフレンド」は、引きこもり層への初めての実効的試みとして評価するが、当事者が、派遣大学生等を拒否し受け入れないことがあり得るなど難しさが予想される。引きこもり層への働きかけとして、直接訪問できないケースには、ボランティア等による電話やメールでの支援なども考えられる。
中学校に心理専門職を派遣するスクールカウンセラー事業は、子どもだけでなく、教員のカウンセリングにも有効である。しかし、時間が短く(週1回8時間)、柔軟な対応が厳しい等の課題もある。
学校だけでなく、児童館、保育園や幼稚園等の出身園、また他の公共施設など多様な居場所の確保を、行政の部局間の相互連携を図りつつ進めるべきである。
子どもが不登校から、学校へ行ってみようという気持ちになったときに即対応できるシステムが欲しい。また、学校と子どもの間に入り調整する役割の人材が必要である。
予防的対応として、学校の中に、子どもが相談しやすい人や場所を確保する仕組みが欲しい。中学校の「心の教室相談員」が、スクールカウンセラーの配置により廃止されるのが残念である。不登校の兆しのある子どもへの対応として一定の効果があったので、何とか残したい。
民生委員・児童委員などの地域人材を学校が活用することも必要であるが、この場合プライバシー保護に対する配慮の徹底を図ることが特に求められる。
不登校が続くことで、学習の遅れが生じ、これが学校復帰の障害になることがあることから、学力補充の方途も併せて考える必要がある。学校復帰のためのスタッフ増などを考えてもよい。
現状では、小学校不登校児童への対策が乏しい。不登校を中学校へ行っても継続することが多いことから、心の教室相談員経験者を小学校に配置できれば効果があると思われる。さらに、スクールカウンセラーの派遣もできれば検討して欲しい。
3 提言
(1)多様な居場所づくりを
不登校の子ども、その兆しのある子どもに対して「居場所」を確保することが必要である。社会との接点を地域の公共的施設、民間の受皿も含め確保することが求められる。そして、受皿機関、保護者等関係者のネットワークづくりを行うべきである。ここでの目的は、引きこもりへの進行を防ぎ、子どもの不登校状態からの脱却であって、性急な学校復帰にこだわらないことを忘れてはならない。このための諸施策を、区教委は推進すべきである。
(2)学校の教育機能の充実
学校の相談機能を高め、発見と気付きの充実を図ることが必要である。特に、不登校の兆しのある子どもたちに対する予防的対応を行う仕組みを、学校につくりあげることが求められる。また、不登校から立ち直ろうとする子どもたちへの「ささえ」の仕組みづくりも必要である。
- 保健室スタッフの充実とスクールカウンセラーの配置
- 「心の教室相談員」の小学校派遣等地域人材の活用
- 教育相談研修の充実と教員への専門的助言の実施
(3)新規事業の推進
引きこもり対策としての新規事業=「ネリマフレンド」事業を実現すべきである。
そこでは、電話やメール、訪問など対象の児童・生徒が受け入れやすい対応を行う必要がある。
センターのトライ教室のあり方を見直し、学力の補充のみならず多様な活動ができる場として、多くの不登校の子どもが気軽に通える適応指導教室を目指すことが必要である。このため、スタッフの意識改革とともに、子どもの希望も入れ、子どもが相談しやすいアプローチのあり方も再構築することが求められる。(※注釈3)
以上
※注釈3:現行2か所の相談所体制は、長期的には4か所に拡充すべきである。当面、センター教育相談室のない西武新宿線沿線地域への開設を図るべきである。
センターは、将来の教育研究所への移行を見据え、具体的な研究の検討に着手することが望まれる。
学校・地域間の人材活用と学校施設の活用および管理のあり方
1 現状と課題
(1)学校・地域間の人材活用
学校は、学習指導要領の改訂に伴う「総合的な学習の時間」の導入により、平成12年度の試行時から知識や技術を提供できる人材を様々な方法等で地域に求めてきたが、必ずしも地域と相互に密な関係が築かれた状況にはない。
これまで、学校は、校長や教員の個別の対応により一部学校関係者等の協力を得て、地域人材の確保に努めてきた。学校が求める地域人材は、優れた知識、技術、資格等をもつ人であり、広く一般の区民が学校にかかわる環境は用意されておらず、学校もそこまでの準備ができていない。平成13年6月の大阪教育大学教育学部附属池田小学校事件(以下「附属池田小事件」という。)を契機とする、一部の地域において行われた学校安全管理への地域協力の動きについても、制度づくりまでには至らなかった。
学校人材の地域への活用は、パソコン講座等の一部に留まっており、学校がもっている教育資源(人的・物的)を地域の公共資源として積極的に活かす発想が、教員の本務の多忙等により余りみられない。
(2)学校施設の活用および管理
学校は、当然のことながら子どもたちの学習活動の場であり、施設利用もこれが最優先される。学校の教育活動以外の時間は、支障のない範囲でその施設を地域の公共資源として活用されてよいが、現状は、教育活動以外の時間における学校管理体制の不備もあり、十分な活用がされていない。学校そのものを教育課程の実施以外にも活用しようとする発想が乏しいため、利用の仕組み、施設の管理運営対策等が中途半端な状況にある。
学校施設の活用の取組は、ゆとり教室の整備(会議室、和室、図書室)、施設開放事業(校庭、体育館、図書室)、目的外使用(教室、体育館)がある。
しかし、ゆとり教室の整備は、バブル崩壊後に計画を中止した結果、学校間に格差を生じている。また、施設開放事業は全校での実施がされておらず、運営委員会の人材難や利用者・団体の固定化等の問題もある。
学校の教育活動外の管理は、平成15年度から機械警備と施設管理員に統一されるが、効率性の面からの問題がある。また、教育活動中の管理は不審者対策に限られ、附属池田小事件の教訓を十分活(い)かしているとはいい難い。
一方、有人警備への要望や校門の閉鎖要求、あるいは平成14年11月文科省の協力者らの報告による管理マニュアル(※注釈4)等、開かれた学校づくりに逆行する動きもある。
※注釈4:「学校施設の安全管理に関する調査研究協力者会議」報告
附属池田小事件等の学校施設での犯罪増加を受け、今後の学校施設の防犯対策等を一年かけて専門家が検討したもので、基本的な防犯対策の考え方として、
(1)防犯対策を行い、安全性を確保した上で、地域に開かれた学校施設づくりを推進
(2)来訪者を確認できる施設計画、見通しの確保や境界への囲障の設置、通報システムの各教室への導入が重要
(3)ソフト面の防犯対策との連携や地域との協力体制の確立が不可欠としている。
としている。
文科省はこれを受け、今年度中に「学校施設整備指針」における防犯対策関連規定の改正を予定している。
2 懇談会での論議経過
(1)学校・地域間の人材活用
学校・地域の人材の双方向活用は、校長、教頭の負担増が必至であるが、教員に対しては何らかの動機付け等条件整備が必要であり、このため、新たな枠組みづくりも合わせて考えなければならない。
学校が地域の人材を活用するのに際し、広く一般区民のかかわりは想定しにくく、優れた技能をもつ人の活用にしても無償では失礼なこともある。
地域人材を積極的に学校がむかえ入れたとしても、逆に学校から地域にどれ程参加・協力できるものがあるか、課題が多い。
教育課程への人材活用には、資格、資質、プライバシー等を配慮しなければならない。
(2)学校施設の活用および管理のあり方
ア 学校施設の活用
学校の開放と開放事業は、次元が違う話である。現状の開放事業は、施設の利用に過ぎず、本質は「学校の開放」にある。
現状の開放事業には、運営委員会の担い手の固定化、高齢化や指導しない(できない)開放指導員、他地域居住者の利用、利用者マナーの問題、図書室など指導員の資質など問題がある。
また、当面施設の拡充はなく、現状に施設の格差があり、多額の経費を投入しているにもかかわらず実績に疑問がある場合もあるので、競争原理の導入やNPO活用等を考えるべきである。
中学校では、開放事業の実施校は少ないが、実態は目的外使用として、ほとんどフル活用されている状況である。しかし、利用者は特定団体中心となっており、活用拡大を図ることになれば教頭の職務負担を考慮し、仕組みの整備が必要である。学校は、本当に施設開放したいのか疑問を感じるときもある。
イ 管理のあり方
夜間・休日管理の地域人材活用は、無償ボランティアでは管理責任の点から無理がある。また、有人警備制度の廃止は疑問であり、開放事業でも夜間の指導員が一人では不安である。
ウ 「学校応援団」(※注釈5)構想
発想は大変興味深いが、実際にだれが担うのか、調整役の責任は重く、屋上屋になる心配もあり、現在活動を担っている人へのさらなる負担が心配である。
この構想は経費削減がねらいと思われるが、施設管理は責任が伴うもので、経費の投入は必然である。財政難ではあろうが費用は必要である。
学校時間外の管理のあり方については別の仕組みをつくる必要があるが、外国では放課後管理は、校長の権限外として機能している例があるように、地域に任せ、教員は授業の充実に集中できるようにすべきである。
中学生海外派遣に同行したとき、学校に地域の人材が参画している場に接し、感心させられた。同じ仕組みが導入できればいいが、学校としては地域に返すものがないのが現状である。
開放事業経費をはじめ関連経費の効率的活用には、エコマネーの発行やNPO等競争原理の導入も考える必要がある。
ポイントは「学校応援団」の調整役にある。その責務を担う調整役には、学校評議員の活用や副校長・教頭を充てるなど位置付けを明確にすべきである。
NPOやボランティアが活躍している今日の状況を踏まえるならば、区民や民間支援機関等の知恵・活力で開かれた学校をつくる時代ではないか。
※注釈5:学校応援団
地域と学校の人材の相互活用と、学校の放課後・休日を地域の資源、コミュニティの核として活用することを目的に学校ごとに設置するNPO的組織
3 提言
(1)教員による地域支援は大切
学校の人材の地域活用である出前講座は、学校休業中を中心に積極的に実施する必要がある。その際、学校と地域の関係強化に教員の役割がより重要になることから、教員が主体的にかかわる仕組みづくりが必要である。
(2)練馬区全体の仕組みづくり
学校の地域への開き方、人材活用の仕方、ノウハウ等の情報を個々の学校のものだけとせず、練馬区全体で共用化できるような仕組みをつくることが求められる。
(3)学校開放に条件整備を
学校は施設、設備、人材、情報等の開放を教育課程の実施に影響のない範囲で積極的に進めるべきであり、そのための条件整備を区教委は将来を見据え、着実に図る必要がある。
(4)「学校応援団」構想の実現に向けて
現在の取組を新たな発想のもとに再編し、進めることが重要である。この面で「学校応援団」構想は十分検討に値する。提案は斬新かつ大胆ではあるが、問題点もかなりあると思われる。
しかし、実現できれば練馬から「学校と地域の相互補完的な地域主導の新しい仕組み」を外に向けて発信できると確信する。このため、目的論議を徹底し、構想の具体化へ向け、細心かつ大胆に進むべきである。
(5)学校は「地域と共にある」
地域人材の活用、施設活用、「学校応援団」構想もすべてポイントは「地域」である。学校、区教委は、区立学校が地域の中に存在しているからこその「区立」であることの重さを改めて認識し、地域とのお互いになくてはならない関係づくりのさらなる具体化を目指す必要がある。
以上
部活動とSSCとの地域における連携のあり方
1 現状と課題
子ども、保護者とも中学校の魅力に部活動(以下「部活」という。)をあげる人が多い。
校長や教員の多くは、部活の教育効果が大きいことから継続、充実して生徒指導や学校全体の活性化につなげたいと思っており、事実、部活にはその力がある。しかし、部活は、もともと教育課程外の活動であり、顧問教員の指導による部活(以下「自前部活」という。)の維持は長期的には厳しい状況にある。
教員の仕事は教育課程の実施であり、部活はこれに優先しない。また、少子化による生徒数の減少、教員採用減の長期化傾向による教員の平均年齢の上昇、教員の部活に対する価値観の変化等により、子どもの多様な部活要望に学校が応えにくくなり、校長も教員に部活の顧問をお願いすることが制度上難しくなっている。
教員はその身分は、練馬区の職員だが給与負担は国および都であり、任免権を都がもつという特異な立場にある。また、大会参加など土曜日曜の部活に対し、都は手当支給を少額だが行っているため、教員への顧問手当として金銭給付を練馬区が更に行うことは制度上極めて難しい。また、人事異動は東京都のローテーションルールにより行われ、一定期間以上の同一校勤務は不可能である。かつ、異動の際の部活優先人事は、これまで行われていない。さらに、区教委には人事権がなく、内申権のみであることからも、部活指導に熱心な教員の人事的継続性の確保は制度上難しい。
顧問のなり手が少ないことへの打開策としての複数校合同部活は、上部組織(中体連等)が柔軟になりつつあるとはいえ、顧問教員の配置が必須要件となっているなど制約が多い。
区教委が部活の補助対策と位置付け事業化している外部指導員制度では、一部に指導をめぐっての顧問教員との軋轢や不調和、指導員としての資質などの問題も生じている。学校や保護者の間に「部活=教員指導であるべき」との強い思いもある。
SSC(総合型地域スポーツクラブ)は、現在、区民有志により自主的に推進委員会として設立されており、国・都の補助を得て、軽スポーツ、ニュースポーツ中心の活動を行っている。その中には、野球や水泳など中学校の合同部活的活動を週1回程度行っているものもあるが、部活代替機能を担うにはまだまだの状況にある。また、今後国・都の補助がなくなるため、財政的自立を図ることが課題となっている。
2 懇談会での論議経過
(1)部活
部活担当教員の肉体的、精神的、経済的負担はかなり大きい。当面、がんばっている教員に何らかの区教委としての支援ができないか、制約はあるだろうが知恵を絞るべきである。
子どもも保護者も校長も、自前部活を可能な限り続けたいと思っている。それだけの魅力が、自前部活にはある。
部活の好影響は短期的にも長期的にもあり、異学年の人間関係、友人関係など社会に出ても大変貴重である。しかし問題もあり、指導教員の中に指導のあり方に疑問のある人もいないわけではない。
中体連の合同部活への制限緩和の動きがある一方で、自前部活でがんばれる状況、環境もまだまだある。
卒業生の積極的活用も、教員の応援策として図るべきであり、ジュニアリーダーの活用も検討する必要がある。
学生インターンシップの部活への活用、研究対象校化等、区教委から部活を援助する新たな施策が打ち出されれば、現場としては「追い風」となる。
しかし、現状の顧問教員制度の維持は短期的にはともかく、将来的には他の方途への舵を切るべきである。
校長や教員の努力のみでは、自前部活衰退の流れを止めることは、極めて困難である。堂々めぐりの議論は無駄であり、外部指導員制度の改善による「外部指導」の方向にと割り切るべきである。その場合、指導員に対する研修の実施や指導・結果評価による選別等、外部指導員制度の改善策を継続的に検討すべきである。
将来的に地域が部活を担う考え方には「学校応援団」でという方法もあるが、これについては調整役がポイントとなる。
SSCに対する働きかけを部活側から行うことで、将来、双方がどこかで着地できればよい。
(2)SSC
現状のような活動形態(場所の回り持ち、週一回)では、部活の受皿としては十分ではない。
文化系部活の受皿としては、現状からは見通しが暗い。
将来のあり方としては、こうした方向性があるが、欧州型に育つには市民参加の基盤が弱い。
(競技スポーツ、勝負指向ではない)市民スポーツ推進指向は、方向としてはよい。区財政負担軽減の考え方も悪くはない。しかし、どのように部活とつながるのかが明らかではない。
3 提言
(1)制度の抜本的改革
自前部活は、結果として教員の努力を頼みとすることになるので、今後の継続を考えると、先行きが不透明といえる。自前部活の可能性を求めるとすれば、制度の抜本的対応まで必要となってしまう。例えば、人事任免権の区への移管など大きな改革となりかねないが、このことは検討が必要である。
(2)外部指導員の積極的導入
さらに、外部指導員の積極的導入による部活の維持へと、長期的な展望を明確にすべきである。このため現状の外部指導員制度の問題点(指導員の人間としての資質・技量のチェック、研修システム、人材発掘の仕組みづくり等)を徹底的に検討し、可能な限りの改善を図るべきである。この過程で、卒業生の活用を積極的に行うなど現状の自前部活の良さを取り入れる等、工夫すべきである。
(3)SSCとの連携
長期的には、部活の地域密着型化を図ることが望ましく、区教委は、SSCとの連絡調整を図り、外部指導員制度とSSCとの一体化へのプログラムづくりを長期の目標とすべきである。
SSCが部活対策に十分な機能を発揮するためには、区教委としても相当の構え、覚悟が必要と考える。加えて、部活とのドッキングも目標化するには、本腰を入れて将来のグランドデザインを描く必要がある。
以上
あとがきにかえて
各回の話合いは現実に横たわる教育課題を手がかりに進められた。話し合うべき課題が多すぎて、一つ一つのテーマに十分に時間をかけることができなかったことは残念だが、その中でも16名の委員はかなり率直に、時に激しく議論を重ねてきたと思う。
一人一人の委員が自分の立場から現状を踏まえた発言を重ねたため、それを一つの方向性にまとめるのは難しい作業であった。それゆえに本答申では、実に豊かだった話合いの枝葉の部分を割愛し、共通した部分、すなわち根幹だけを示すこととなった。
結果として表現上の抽象度が上がり、具体性にかける部分があることは否めない。「21世紀の練馬の教育」という幹にいきいきした枝葉をどのように伸ばしていくかは、今後の課題である。そしてそれはすべての練馬の区立学校とそれを支える地域住民との実践にかかっているといえよう。
また、時間的な制約の中で、予め挙げられたテーマ以外の課題を議論するゆとりがなかったが、話し合うべき課題はいくつか挙げられている。例えば、障害のある子どもと障害のない子どもとが共に育ち合う学校づくり、学校教育の礎としての幼稚園教育の位置付け、家庭の子育て支援の方向性、情報教育の推進、新しい枠組みの学校の構築、などである。
これらについても既に行われている確かな実践の延長線上に、練馬独自の新しい方向性を導き出していくことが今後の課題といえよう。
社会の変化は激しい。懇談会発足から答申をまとめるこの1年半弱の間にも、他区では画期的な教育改革が次々と打ち出されてきた。本懇談会の議論はそれに比して緩やかだったかもしれないが、教育の不易と流行をきちんと押さえ、本質をはずさない議論を重ねてきたと確信している。豊かな時代に展開される21世紀の教育、だれも体験したことがない21世紀の教育。新しく生み出すべきものは何かということと、守るべきものは何かということをしっかり見極めて進みたい。
「21世紀の練馬の教育を考える懇談会」委員全員、立場が違っても共通してもっていた視点を最後に今一度記して「あとがき」にかえたいと思う。
子どもが「通いたい・学びたい・共に過ごしたい」と思う学校には、常に子どもが主役の生活が展開されている。そしてそのような生活をつくり上げるのは教員一人一人の弛まぬ資質向上の努力と共に歩む地域の温かな存在なのである。
参考資料
「21世紀の練馬の教育を考える懇談会」の発足にあたって
平成13年10月29日
練馬区教育委員会
教育長 薗部 俊介
今、国をあげて教育改革が叫ばれています。昨年、内閣総理大臣の諮問織関として設置された「教育改革国民会議」では、多くの課題が論議されました。この提言を踏まえて、国は「21世紀教育新生プラン」を作成し、これに基づき学校教育法をはじめとする教育改革関連法を改正するなどの取組を始めています。
一方、昨年4月からの制度改革による地方分権の流れは教育の分野にも及んでいます。
各自治体がそれぞれの地域特性を生かして、特色ある学校づくりを進めようとする動きは全国に広がっており、21世紀を担う子どもたちのための教育のあり方が地域の視点から見直されようとしています。
来年4月からは、学校週5日制の完全実施のもとに、いよいよ新学習指導要領が施行され総合的な学習の時間が導入されるなど教育内容の大きな改編が行われます。また、この制度は、子どもたちが、土曜・日曜の休日をどのように過ごすかといった家庭生活にも大きな影響を及ぼすものです。
このような大きな変革の時代の中で、子どもたちをめぐる社会環境は揺れ動いています。
大阪の附属池田小学校事件は、学校の安全神話を根底から覆しました。また、子どもたちや教員にかかわる事件が多発する一方、不登校や学級経営上の諸問題も依然として重要課題となっています。さらに、公立を避け私立の学校へ進学する子どもたちも増加しています。
学校、家庭、地域の連携が叫ばれて久しくなりますが、改めて、公立学校の存在の意味を問い直すとともに、新たな視点に立った、学校と地域との関係、とりわけ地域に開かれた学校とは何かを探っていかなければなりません。
また、これとあわせて、子どもたちにとって魅力ある学校づくりも求められています。学校の質を高め、特色ある教育活動が展開される学校とはどのようなものか。そのためには、どのような仕組みづくりや学校現場への支援策が必要なのか、地域とのかかわりの視点とあわせて、子どもたちの目線に立った幅広い議論が必要です。
練馬区教育委員会は、昨年度、行政、学校関係者からなる「練馬の教育21推進検討委員会(以下「推進委員会」という。)」を設置し、元気の出る学校・特色ある学校・開かれた学校を目指し、いくつかの課題について検討を行いました。推進委員会の提言を受け、今年度、学級経営補助員制度を導入するなどの新しい取組をスタートさせたところです。
本懇談会は、推進委員会の経緯を踏まえ、広範な区民、学識経験者の方に、ご参加をいただくこととしました。懇談会として改めて新たな視点から、時代の要請に応えられるこれからの練馬の教育についてご議論いただく中で、特に、下記の課題をご検討いただき、今後の施策のあり方へ積極的なご提言をお願いしたいと思います。
練馬区教育委員会は、21世紀の練馬こそ、子どもたちがいきいきと学び育つまち、区民と一体になって教育に取り組むまち、そして「練馬の教育改革」と高く評価されるまちを目指したいと切に願っております。何よりも子どもたちが楽しく学び集える学校をつくるため、皆様のご協力を心からお願い申し上げます。
記
1 これからの学校の基本的あり方について
2 地域に開かれた学校づくりについて
・学校・地域間の人材活用と学校施設の活用および管理のあり方
・部活動とSSC(総合型地域スポーツクラブ)との地域における連携のあり方
・登校支援対策等のあり方
3 特色ある学校づくりについて
・一貫教育の検討
・学校規模と学区域(自由化、学校選択制)のあり方
・学校の個性化と魅力づくり
以上
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教育振興部 教育総務課 庶務係
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ファクス:03-3993-1196
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