第2章 社会状況の変化に対応した「新しい福祉」の展開のために
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ページ番号:520-572-517
更新日:2010年2月1日
少子高齢社会の進展は、福祉サービスの拡大・多様化をもたらすだけでなく、少子高齢化を支えるための財政支出を確実に大きくしています。これまでのサービスの枠組みを維持したままでは、新たな区民のニーズに応えることが難しくなります。
今後、必要な福祉サービスを提供していくためには、限られた財源を効率的に配分する必要があります。また、受益と負担のあり方、負担能力に応じた適正な負担や世代間の公平性を確保するなど、これまでの制度を根本から見直していく必要があります。
1 金銭給付的サービスの見直しが必要です。
金銭給付的サービスは、高齢化などによる受給者の増加により、財政負担が増加する性質をもっています。また、社会経済状況の変化に伴い、事業開始当初の意義が薄れたものもあります。一律の給付から、サービス内容に応じて廃止・削減や所得制限の導入などの見直しを行うことが必要です。金銭給付サービスを見直し、高齢者や障害者などの在宅生活を支援するサービスを充実するための施策に、財源の重点配分を行う必要があります。
重度要介護高齢者手当は、平成14年度現在の制度を維持すると、今後5年間で6億5千万円の増が見込まれます。このため、手当の額を見直して、財源を新たなサービスの充実のために配分することとしました。しかし、見直し後においても要介護高齢者の増加に伴い、経費増が見込まれます。さらに見直しが必要になります。
2 受益と負担のあり方などの検討が必要です
福祉サービスは、限られた人のための特別なサービスではなく、生活の上での基本的なニーズとして、必要な人が誰でもいつでも利用できる普通のサービスに変わりつつあります。
サービスに対する負担についても、従来の「福祉は無料」という意識から、負担能力に応じた適正な負担やサービスの利用に伴う負担などについて、一定の理解が得られている状況にあります。これは世代間の公平の観点に合致し、またサービスを利用する方と利用しない方との間の公平の観点にも合致するものです。
今後は、さらに、適正な費用負担、サービスに要する費用と負担のバランスなど、受益と負担の適正化について検討を進めることが必要です。
介護保険制度の保険料負担に対しては、65歳以上の7割の方が、高齢者も保険料の負担は当然、または止むを得ないと考えています。
経済的には、高齢者は他の年齢層に比較して遜色はありません。その一方、子育て世代にゆとりのない傾向が見られます。年齢による区分だけで、高齢者が無料または低負担でサービスを受けることは、他の世代との間に公平性の問題が生じます。
福祉サービスの水準と費用負担のあり方について、4割の方が税金などの負担が増えるのは当然、または止むを得ない、2割を超える方が税などの負担増ではなく利用者が負担すべきであると考えています。
適正な費用負担を進めるに当たって、利用料滞納の解消は欠かせません。例えば、保育料の収納状況にみられるように収納率は100%に届いていません。利用者間の公平性を確保していくためにも、解消策を講じる必要があります。
保育料総額 | 収入額 | 滞納額 | 収納率 | |
---|---|---|---|---|
平成13年度分 | 182,193,000 | 174,442,000 | 7,817,000 | 95.7% |
過去5年間の未納分 | 29,960,500 | 2,006,500 | 24,489,000 | 6.7% |
合計 | 212,153,500 | 176,448,500 | 32,306,000 | 83.2% |
保育料総額 | 収入額 | 滞納額 | 収納率 | |
---|---|---|---|---|
平成13年度分 | 1,404,644,940 | 1,364,936,980 | 40,040,360 | 97.2% |
過去5年間の未納分 | 244,558,190 | 32,050,300 | 148,376,390 | 13.1% |
合計 | 1,649,203,130 | 1,396,987,280 | 188,416,750 | 84.7% |
※注釈:滞納額は、保育料総額から収入額、不納欠損額、還付未済額を加除するため、保育料総額から収入額を引いた額に一致しません。
3 民間やNPOなどとの役割分担を進めていく必要があります。
区民の生活に必要なサービスの提供は、区が引き続き取り組んでいかなければなりませんが、すべてを区だけで行うには、多様なサービスの確保や効率性などの点から、限界があります。多様なサービスを効率的に提供している民間事業者や、公的・営利的サービスでは対応できない分野を担っているNPOなどと連携しながら、役割分担を進めていく必要があります。
また、サービスの向上やコストの削減などのため、行政責任を確保しながら、事業の民間事業者等への委託を検討していく必要があります。
4 これまでも福祉サービスの効果を検証し、見直してきました。
現在、区では、区が行っているすべてのサービス・事務事業について徹底した評価を行い、縮小や廃止を含め、見直しを行っています。福祉分野においても、サービスの効果を検証し、サービスの内容や対象者の見直しを行うとともに、適正な負担の導入を検討しています。見直しは、これからも続けていきます。
見直しを行った事業
事業名 | 事業終了年度の決算額 | 事業終了年度 | 内容および理由 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
総経費(円) | ひとり当たりに要する経費(円) | うち利用者負担額(円) | 利用者数(人) | |||
ひとりぐらし高齢者慰安旅行 | 1,858,702 | 23,234 | 3,000 | 80 | 平成13年度 | 個人旅行の定着など社会状況の変化により、区が団体旅行を実施する必要性が薄れたため。 |
障害者(児)慰安旅行 | 1,011,491 | 26,618 | 3,000 | 38 | 平成13年度 | 個人旅行の定着、宿泊設備のバリアフリー化などの社会状況の変化により、区が団体旅行を実施する必要性が薄れたため。 |
ひとり親バス旅行 | 826,725 | 19,226 | 3,000 | 43 | 平成13年度 | 個人旅行の定着など社会状況の変化により、区が団体旅行を実施する必要性が薄れたため。 |
ホームヘルパー養成講習 | 2,809,800 | 73,942 | 0 | 38 | 平成13年度 | 介護保険の導入に伴い、ホームヘルパーの養成は、各事業者の責任において行うため。 |
生活保護世帯に対する夏期および冬期援護 | 56,837,000 | 4,958 | 0 | 延11,463 | 平成13年度 | 本事業は、被保護世帯と一般世帯の消費水準の格差を縮小することを目的としてはじめたが、現在の生活保護基準は、一般世帯の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているため。 |
生活保護世帯に対する出産祝品支給 | 98,000 | 7,000 | 0 | 14 | 平成13年度 | |
ひとりぐらし高齢者友愛訪問 | 73,000 | 36,500 | 0 | 2 | 平成14年度(※注釈) | 対象者が2人となり、新たに実施する見守りネットワーク事業で対応することができるため。 |
敬老入浴券の交付 | 3,285,220 | 201 | 0 | 延16,319 | 平成14年度(※注釈) | 区内に浴場組合加入公衆浴場が少なく、かつ地域偏在が激しいため。 |
※注釈:平成14年度については、決算見込額を記載しています。
事業名 | 予算額 | 総経費(円) | ひとり当たりに要する経費(円) | うち利用者負担額(円) | 利用者数(人) | 見直し実施年度 | 内容および理由 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
高齢者世帯等家賃助成 | 見直し前の予算額 | 45,890,000 | 441,250 | 0 | 104 | 平成14年度 | 本事業による助成金受給者と取壊し以外の理由での立ち退きなどを受けている住宅困窮者との間に不公平感が生じているため。 |
平成15年度予算額 | 39,542,000 | 411,896 | 0 | 96 | |||
重度要介護高齢者手当の支給 | 見直し前の予算額 | 767,955,000 | 330,000 | 0 | 2,856 | 平成14年度 | 今後5年間で6億5千万円の予算増が見込まれること。また、手当の額を見直して、財源を新たなサービスの充実のために配分するため。 |
180,000 | |||||||
平成15年度予算額 | 728,217,000 | 180,000 | 0 | 3,378 | |||
96,000 | |||||||
高齢者福祉電話 | 見直し前の予算額 | 28,905,000 | 75,078 | 0 | 385 | 平成15年度 | 平成15年度から通話料600円/月の助成を廃止し、基本料金のみを助成する。 |
平成15年度予算額 | 24,587,000 | 57,852 | 7,000 | 425 | |||
障害者福祉電話 | 見直し前の予算額 | 5,905,000 | 34,735 | 0 | 170 | 平成15年度 | 平成15年度から通話料600円/月の助成を廃止し、基本料金のみを助成する。 |
平成15年度予算額 | 5,145,000 | 27,962 | 7,000 | 184 |
事業名 | 予算額 | 総経費(円) | ひとり当たりに要する経費(円) | うち利用者負担額(円) | 利用者数(人) | 見直し実施年度 | 内容および理由 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
自立支援住宅改修給付 (設備改修給付) |
見直し前の予算額 | 92,160,000 | 186,559 | 18,656 | 494 | 平成15年度 | 対象者を明確にするため、対象者を介護保険認定者とした。 |
平成15年度予算額 | 151,513,000 | 144,989 | 14,499 | 1,045 |
事業名 | 内容および理由 |
---|---|
(仮称)第7福祉園(貫井)の運営 | 平成16年2月開設予定の(仮称)第7福祉園について、運営を民間に委託する。 |
今後、見直しを検討する事業
事業名 | 平成15年度予算額 | 内容および理由 | |||
---|---|---|---|---|---|
総経費(円) | ひとり当たりに要する経費(円) | うち利用者負担額(円) | 利用者見込数(人) | ||
敬老調髪券の交付 | 38,683,000 | 2,129 | 0 | 18,171 | 出張調髪の充実など、より必要性の高い事業へ移行していく。 |
重度要介護高齢者手当の支給 | 728,217,000 | 180,000 | 0 | 3,378 | 要介護高齢者の増加に伴い、経費の増加が見込まれるため、さらに見直しを行う。 |
96,000 | |||||
高齢者寝具 クリーニングサービス |
8,778,000 | 15,509 | 0 | 566 | 高齢者布団乾燥、消毒、丸洗いサービスと内容が一部重複するため、廃止を検討する。 |
事業名 | 平成15年度予算額 | 内容および理由 | |||
---|---|---|---|---|---|
総経費(円) | ひとり当たりに要する経費(円) | うち利用者負担額(円) | 利用者見込数(人) | ||
高齢者出張 調髪サービス |
12,912,000 | 21,520 | 0 | 600 | 必要な人に必要なサービスという視点から出張回数を年4回から6回に拡大する。併せて、利用者負担の導入を検討する。 |
障害者の福祉タクシー券の交付 | 284,372,000 | 54,000 | 0 | 6,854 | 利用者負担の導入を検討する。 |
ひとりぐらし高齢者入浴証の交付 | 50,966,000 | 16,537 | 0 | 3,082 | 徒歩圏内に浴場がない地域があり、入浴証の利用が困難な人との公平性を保つため利用者負担の導入を検討する。 |
事業名 | 平成15年度予算額 | 内容および理由 | |||
---|---|---|---|---|---|
総経費(円) | 1食当たりに要する経費(円) | うち利用者負担額(円) | 延べ食数 (見込数)(食) |
||
高齢者食事サービス事業 学校給食型 |
12,190,000 | 751 | 1食当たり275 | 16,224 | 事業の目的をひとりぐらし高齢者等の安否確認から介護予防・生活支援へと変更する。そのため、利用者の心身の状況を把握し、本人の自立に適したサービスが提供できるしくみづくりを検討する。 |
高齢者食事サービス事業 福祉施設配食型 |
87,925,000 | 916 | 1食当たり350(※注釈) | 96,018 | |
高齢者食事サービス事業 福祉施設会食型 |
8,736,000 | 700 | 1食当たり350(※注釈) | 12,480 | |
高齢者食事サービス事業 民間事業者配食型 |
12,621,000 | 588 | 1食当たり350(※注釈) | 21,450 |
※注釈:利用者負担額は、総経費に含まれない。
事業名 | 平成15年度予算額 | 内容および理由 | |||
---|---|---|---|---|---|
総経費(円) | ひとり当たりに要する経費(円) | うち利用者負担額(円) | 利用者見込数(人) | ||
高齢者の紙おむつ支給 | 143,192,000 | 現物86,400 | 0 | 3,200 | 現在の一律支給から支給額を引き上げるとともに、利用者負担を導入し、必要な人に必要な分を支給するよう検討する。 |
現金57,600 | |||||
高齢者布団乾燥・消毒・丸洗いサービス | 13,507,000 | 10,519 | 0 | 1,284 | 対象者の見直しと併せ、利用者負担の導入を検討する。 |
事業名 | 内容および理由 |
---|---|
高齢者センター(豊玉中)の運営 | 平成16年度開設予定の(仮称)豊玉中高齢者センターについて、運営の民間委託を検討する。 |
このほかにも、廃止、縮小、利用者負担、対象者の見直し、民間委託などの検討が必要な事業があります。
事業名 | 事業名 |
---|---|
高齢者アパートの提供 | 三療サービス |
アパートのあっせん | 敬老祝品の支給 |
高齢者集合住宅の生活協力員の配置 | 老人性白内障特殊眼鏡等の助成 |
障害者新規学校卒業者就職祝金の支給 | 障害者への自動車燃料費助成 |
これ以外の事業についても、絶えず費用対効果や効率性などを検証し、見直しを検討します。
費用計算について
1.各種福祉サービスの利用者ひとり当たりに要する経費の年額を算定し、総経費、利用者負担額とともに記載しました。
2.手当等の支給額が定額のものは、その年額とし、その他のサービスは予算額・決算額を利用者数で除した額としました。
定額で表記したサービスの場合、総経費と、ひとり当たりの経費に利用者を掛けた数とは一致しません。
福祉サービスに要する経費に比べ利用者の負担割合が低いサービスがあります。福祉サービスの総量の拡大を図るうえでも負担のあり方について検討が必要です。
事業名 | 総経費(円) | ひとり当たり月額経費(円) | うち利用者負担額(円) | 定員 (13年4月1日)(人) |
延べ利用者数(人) |
---|---|---|---|---|---|
学童クラブ | 1,798,268,000 | 45,996 | 月額5,500 | 3,315 | 39,092 |
区立保育所(0歳児) | 2,802,888,129 | 464,901 | 平均月額43,701(※注釈1) (月額0~57,500) |
527 | 6,029 |
区立保育所(1歳児) | 2,458,926,990 | 221,226 | 平均月額20,795(※注釈1) (月額0~57,500) |
926 | 11,115 |
区立保育所(2歳児) | 2,521,074,717 | 195,417 | 平均月額18,369(※注釈1) (月額0~57,500) |
1,075 | 12,901 |
区立保育所(3歳児) | 1,674,128,295 | 118,405 | 平均月額11,130(※注釈1) (月額0~22,600) |
1,180 | 14,139 |
区立保育所(4.5歳児) | 3,185,260,032 | 107,552 | 平均月額10,427(※注釈1) (月額0~18,000) |
2,539 | 29,616 |
区立保育所(全児童平均) | 12,642,278,163 | 171,305 | 平均月額15,651 | 6,247 | 73,800 |
私立保育所補助 | 1,788,915,548 | 118,644 | 平均月額13,942 | 1,269 | 15,078 |
保育室補助 | 379,452,882 | 104,102 | 基本料金 月額30,700~52,500 |
311 | 3,645 |
認証保育所補助(※注釈2) | 24,803,640 | 84,080 | 基本料金 月額43,000~60,000 |
35 | 295 |
家庭福祉員補助 | 157,628,847 | 103,567 | 基準月額25,300 | 144 | 1,522 |
駅型グループ保育室補助 | 71,900,139 | 107,154 | 基準月額25,300 | 51 | 671 |
※注釈1:区立保育所全経費の利用者負担割合(9.4%)から試算
※注釈2:認証保育所経費については14年度より開始した事業のため14年度見込み額を記載しました。
お問い合わせ
福祉部 管理課 地域福祉係
組織詳細へ
電話:03-5984-2716(直通)
ファクス:03-5984-1214
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