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情報公開制度の見直しについて(答申)目次

ページ番号:478-836-965

更新日:2010年2月1日

第1章 練馬区公文書公開条例の見直すべき事項

1 条例の名称

「練馬区公文書公開条例」を「練馬区情報公開条例」とする。

【説明】
 現行条例は、公文書の定義として、職務上作成または取得した文書等の他にビデオテープや録音テープも含んでいる。しかし、情報化の進展に伴い、区においてもパソコン・ワープロの普及やインターネットによる行政情報の提供など、電磁的情報が次第に増えつつある。
 そこで、見直し後の条例は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式などの人の知覚によっては認識することができない方式で作成された記録=フロッピーディスクに記録された情報等=をいう。)にも公開の範囲を拡大していくこと(「4 公文書の定義」参照)、「区政への区民参加」および「開かれた区政」を積極的に実現するためには、情報の公表・提供施策の新たな仕組みを構築し、なお一層の推進を図る必要があること(「9 情報公開の総合的推進」参照)、あるいは固いイメージから区民にとっても親しみあるわかりやすい名称とすることを考慮すると、「練馬区情報公開条例」が望ましい。

2 「公開」と「開示」の区別

 請求があって公開するときは「開示」という表現を用いるべきか、これまで通り「公開」を維持すべきかの検討を行ったが、概ねの意見は「公開」となった。

【説明】
 情報公開法は、開示請求権のように、請求があって公開するときは「開示」の文言を使用しているのに対し、現行条例は「公開」となっている。そこで、その妥当性の検討をおこなった。
 練馬区公文書公開条例は制定以来約14年を経過し、「公開」という文言が区民の間に浸透し、区民にとって分かりやすく使いやすいこと、「公開」には区民との信頼を深め、より良い未来を開くという理念が含まれていること、さらには、「知る権利」を明記することを考慮すると(「3 条例の目的」参照)、「公開」の方が公共性が認められ、政治的観点からも象徴としての効果が強いことなどの理由により、現行条例どおり「公開」が適当であるという意見が大勢を占めた。
 しかし一方、「公開」は公衆に開放するという広い意味を有しており、公文書請求の有無にかかわらず、区が積極的に情報提供・公表することを示し、請求に基づく公開は当該請求者だけに公文書を示すことであり、「開示」が妥当であるなどの反対意見もあった。
 なお、練馬区個人情報保護条例における「開示」との整合性については、各条例の趣旨、目的および法領域などを踏まえると、用語を統一する必要性はないということで意見の一致がみられた

3.条例の目的(第1条関係)

知る権利」および区が区政に関し区民に説明する責務、いわゆる「説明責任」を明記する。

【説明】
1.「知る権利」の明記
 「知る権利」とは、憲法学上、国民主権の理念を背景に、表現の自由を定めた憲法第21条に基づいて主張されている。表現の自由は、政府が保有する情報の公開を求める権利を含むという理解であり、「知る権利」と呼ばれている。
 しかし、この権利は基本的には抽象的権利であり、法律による制度化を待って具体的な権利となるという見解が有力である。また、最高裁の判例においても、請求権的な権利としては認知されるに至っていない。
 情報公開法の制定の際、「知る権利」が象徴として、情報公開に対する国民の関心を高め、その制度化の推進に大きく寄与してきた役割を認め、国会の両議院は附帯決議の中で「知る権利については引き続き検討を行うこと」とされた。このことは、情報公開法は「知る権利」を明記しなかったが、否定したものではないことを意味している。
 ところで、区政を取り巻く状況は地方分権や都区制度改革の実現など急激に変化しており、区民との協働を可能とする開かれた、わかりやすい区政の実現が強く求められている。
 このような状況を踏まえ、公開請求権を分かりやすく説明すると同時に、情報公開制度に対する区の積極的姿勢を明確に示す言葉として「知る権利」を目的規定に明記することが必要である。

2.「説明責任」の明記
 「説明責任」とは、区政について区民に説明する区の責務を示し、区政を信託した主権者である区民に対し、区としての行政活動の状況を明らかにして、それについて説明する責務をいう。
 この「説明責任」は、国においては「国民主権の原理」、また地方自治においては憲法が定める「地方自治の本旨」、とりわけ住民自治を踏まえ住民の行政への積極的な参加を促進し、地方自治における民主主義を実現するという理念を基礎とする。
 このため、区の「説明責任」を明記することは、区政全般に対する区民の理解を深め、公正で透明な開かれた区政を実現することを意味する。
 さらに、「説明責任」は請求に対する義務的な公開だけに限らず、区政情報の積極的な提供・公表など情報公開制度全般に通じる原理として捉えることができるため、「説明責任」を目的規定に明記することが必要である。

4 公文書の定義(第2条関係)

 情報公開法が採用した「組織共用文書」より広い概念である現行条例の「当該実施機関が管理しているもの」を維持する。
 また、公文書の範囲に「電磁的記録」を新たに加え、対象範囲を拡大する。

【説明】
 現行条例は、「内部事務手続を開始したか否かを問わず、職員が職務上、文書等をまさしく作成し終えた時点または受領した時点以降でかつ実施機関が管理しているもの」を公文書と定義している。
 これに対し、「組織共用文書」とは、公文書が作成または取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織として共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において業務上必要なものとして利用、保存されている状態のものを意味する。したがって、通常、職務上の内部検討に付された時点以降のものを対象文書として取り扱うことになる。
 現行条例の規定と組織共用文書を比較すると、現行条例の適用範囲が時系列的には若干広い概念として捉えることができるので、現行条例の規定を維持すべきである。
 また、行政情報の電子化の進展に対応するため、磁気ディスク等の電磁的記録については、記録される情報媒体にかかわらず、「公文書」の範囲に新たに含めるべきである。

5 公開請求権者の範囲(第4条関係)

現行条例の「広義の区民および利害関係者」から「何人」に拡大する。

【説明】
 現行条例は、請求権者を、区民、区内に事務所等を持つ個人および法人その他の団体、区内の事務所等に勤務する個人、区内の学校に在学する個人(以上を「広義の区民」という。)および実施機関が行う事務事業に利害関係のあるものとしている。
 条例の目的に「知る権利」を明記するとした趣旨を踏まえ、請求権者の範囲を現行条例より拡大する視点から、広義の区民の他に「情報を必要とする理由」を明らかにすれば誰でも公開請求ができるとする考え方(便宜上「実質何人説」という。)と公開請求権を「何人」にも認めるべきとする考え方(便宜上「何人説」という。)の検討をおこなった。
 区の情報公開制度が「地方自治の本旨」の理念を踏まえたものであり、区として説明する責務があるのは第一義的には区民であることや自治権の範囲を越えることになるなどを理由として、請求権者の範囲を「実質何人説」とすべきであるとの意見も出された。
 しかし、国際化や高度情報化に伴い情報の流通も国内外に瞬時に広がること、行政の広域化に伴い、区民か否かにかかわらず、各種施策に対する関心を引き起こしており、これが区政への利益となって反映されること、また、国と同様のスタンスに立って情報公開を進めていく必要があることなどを総合的に斟酌すると、開かれた区政のより一層の進展を図る観点から、「何人説」が妥当である。
 なお、理由を明示させる「実質何人説」は実務上の運用において法的安定性を欠くおそれがあるとの指摘もなされた。

6 非公開情報等(第6条関係)

1.公開・非公開の枠組み等(第6条第1項関係)

 1)現行条例の「非公開情報が記録されている公文書については、公文書の公開をしないことができる。」旨の規定を、情報公開法と同様に「非公開情報が記録されている場合を除き公開しなければならない。」旨の規定に変更する。
 2)1の変更に伴い、情報公開法と同様に「公益上の理由による裁量的公開」の規定を新たに設ける。

【説明】
 現行条例の規定は、「原則公開」の例外として、実施機関に公開義務を免除する形式を採用し、非公開を義務づけたものではないとされている。
 しかし、非公開情報とは、個人や法人等の権利利益または公益を保護するために設けられているものである。このことは、公文書に記載されている当該個人や法人の側からみると、自己の権利利益が保護されるという権利性を有することを意味することとなる。
 これを押し進めると、実施機関は非公開情報を裁量的に公開できる余地があると解釈することに疑問が生じる。むしろ、非公開情報は公開を禁止したものと解することの方が無理のない解釈と言える。
 以上のことを踏まえるとともに、「原則公開」の趣旨を徹底するためには、情報公開法と同様に、非公開情報を除き公文書の公開義務があることを明らかにする規定に変更すべきである。
 また、この変更に伴い、実施機関が「公益上の理由により裁量的に公開する場合」には、情報公開法と同様にこれに対応する新たな規定を設けるべきである。この際、裁量的公開を行政処分として位置づけるなど濫用の防止策を検討すべきである。

1.個人情報(第6条第1項第1号関係)

 1)個人情報の規定の仕方については、現行条例のとおり「特定の個人が識別され得るもの」(個人識別型)とする。
 2)個人識別性がなくても、個人の権利利益を侵害するおそれのあるものは非公開とする規定を新たに加える。
 3)個人情報の例外規定(例外的公開事項)はつぎのように再編成する。
 ・法令の規定によりまたは慣行として公にされ、または公にすることが予定されている情報(便宜上「公領域情報」という。)
 ・人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(便宜上「公益上の義務的公開」という。)
 ・公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職、氏名および当該職務遂行の内容に関する情報(便宜上「公務員情報」という。)

【説明】
 プライバシーの具体的概念は、法的にも社会通念上も明確ではなく、個人の価値観によりその範疇も個人差があり、何がプライバシーであるかについて一定の基準を設けることは非常に困難である。よって、現行条例の「個人識別型」を維持する。
 また、カルテ、反省文のように個人識別部分を非公開としてもなお個人の権利利益を侵害するおそれのある個人情報については、非公開とする新たな規定を加えることが必要である。
 また、個人情報を例外的に公開する規定については、情報公開法を準用し、現行条例の規定を「公領域情報」、「公益上の義務的公開」および「公務員情報」に再編成すべきである。
 特に、「公務員の氏名」については、ストーカーなど特定職員への非難、攻撃など心理的圧迫および当該職員の権利利益を不当に侵害するおそれのある場合を除き、今後も公開することが必要である。
 なお、「個人識別型」はともすると、保護範囲を広げ保護する必要のない情報までも含んでしまうおそれがあるので、適用に当たっては今後も適正な対応が望まれる。

3.法人情報(第6条第1項第2号関係)

 1)現行条例の「明らかに不利益を与えると認められるもの」の規定を、「(法人等の)権利、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に改め、より客観性のある要件とする。
 2)法人情報の例外規定(例外的公開事項)については、現行条例の趣旨を活かし文言の整理をおこなう。
 3)情報公開法の「非公開特約条項(公にしない約束で任意に提供された情報)」は設けない。

【説明】
 現行条例の「明らかに不利益を与えると認められるもの」とは、運用解釈では技術、営業活動および経営に関する秘密など競争上または事業活動上の不利益となると認められるものを非公開としている。しかし、当該規定は明確性に欠けるため、「(法人等の)権利、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に改めるべきである。
 また、企業活動は区民生活と様々な関わり合いがあり、区民の健康や健全な生活等の保護の面から情報を公開すべき場合もある。そこで、法人等の非公開理由と公開の公益を比較衡量して必要な情報を公開していくため、法人情報の例外公開の規定については、現行条例の趣旨を活かしながら、より明確性に配慮した文言の整理を行うべきである。
 約束等の特殊な事情によって非公開とする「非公開特約条項」については、情報の性質・内容や公開に伴う具体的支障の有無等から総合的に判断することになる他の非公開情報における判断と異なること、さらに「原則公開」の趣旨とも相い入れないものである。
 また、当該情報の取扱いとして、提供した第三者の権利利益は個人情報または法人情報としての保護が可能であり、さらに、区と提供した第三者の信頼関係と公正性の確保は「事務または事業に関する情報」等の該当性の問題として検討すれば十分と考える。
 したがって、「非公開特約条項」は新たに設ける必要性はないと判断した。

4.事務または事業に関する情報(第6条第1項第3号ア関係)

 情報公開法の規定に沿って、区または国等の行う事務事業についてグループ分けし、各グループごとに公になることによる典型的な支障を記述するとともに、例示規定であることを明確に表現する。

【説明】
 現行条例の「区政の公正または適正な執行を著しく妨げるおそれ」の要件は、包括的かつ抽象的であり、非公開の範囲は不明確なものとなっている。これをより具体的かつ分かりやすいものとするため、情報公開法に準じて事務事業の内容および性質等に従ってグループに分類し、典型的な支障を例示すべきである。
 また、現行条例の「入札予定価格、試験問題、職員勤務評定記録、教育指導記録または交渉もしく争訟の処理方針その他これらに類する情報」とは、記載の当該事務事業およびこれに類する事務事業に限定する「制限列挙」なのか「例示規定」となるのか解釈上不明確である。見直しに当たっては、規定に示された事務事業は典型的な支障を示すための事例を掲げたものであり、これ以外の事務事業であっても、当該事務事業の性質上、適正な行政運営に支障を生じさせると認められるときは非公開となることを明確に表現することが必要である。
 典型的な支障の例示としては、情報公開法に準じて、以下のとおりとすることが望ましい。
 ・監査、検査、取締りまたは試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれまたは違法もしくは不当な行為を容易にし、もしくはその発見を困難にするおそれのあるもの
 ・契約、交渉または争訟に係る事務に関し、実施機関または国もしくは他の地方公共団体の財産上の利益または当事者としての地位を不当に害するおそれのあるもの、調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な執行を不当に阻害するおそれのあるもの
 ・人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれのあるもの

5.国等との協力関係維持に関する情報(第6条第1項第3号イ関係)

 国等との協力関係維持に関する情報の非公開条項は削除する。

【説明】
 国等協力関係維持情報は、主として国との協力関係を損なわないようにとの配慮のもと非公開情報として取り扱ってきたものであるが、要件が「国等との協力関係を著しく損なうおそれのあるもの」となっており、国等の「指示」や「指導」に含まれる考えが優先される傾向があったと言える。
 一方、地方分権推進の流れの中で、国との関係も垂直関係から水平関係へと変化し、機関委任事務が廃止され、地方公共団体の事務は自治事務および法定受託事務となった。
 今後は、国等が作成した情報であって審議、検討、協議に関する情報を区が取得すること、あるいは法定受託事務などには公開してはならないという国の指示も想定されるが、この取扱いについては、「事務または事業に関する情報」または「審議、検討および協議に関する情報」の非開示情報の該当性の問題として対応が可能と考える。
 したがって、この条項を維持する理由は乏しくかつ公開範囲の拡大を図る観点から、削除する。

6.審議、検討および協議に関する情報(第6条第1項第3号ウ関係)

 意思形成過程情報は広く区民に公開されることが「区政への区民参加」を実現する上で重要な要素となる。
 そのため、公開とする場合の支障の内容を情報公開法に準じて明確化し、拡大解釈のおそれを抑制するとともに「原則公開」の趣旨をより徹底する。

【説明】
 意思形成過程情報とは、区の機関内部、機関相互および区と国または他の地方公共団体との審議、検討、協議等に関する情報である。これらの情報の中には、行政としての最終的な意思決定の一段階であるため、公開することにより、率直な意見交換への支障や区民に無用な混乱を生じさせるなどの情報も含まれるので非公開とされている。
 しかし、区民の知る権利および区の説明責任の観点からみると、意思形成過程情報は広く区民に公開されることが区政への区民参加を実現する上で重要な意味を持つものである。
 そこで、実施機関の恣意的な非公開を抑制し、「原則公開」の趣旨を徹底する立場と非公開による公益の保護を図る立場をより良く調整できるよう、支障の内容をより具体的かつ明確に規定することが必要である。
 そのためには、情報公開法に準じて、「公開することにより、率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、特定の者に不当に利益を与えもしくは不利益を及ぼすおそれ、または不当に区民の間に著しい混乱を生じさせるおそれ」の規定が望ましい。
 なお、「不当に」とは、審議、検討等の情報を公開することの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が見過ごし得ない状況を意味するので、「比較衡量の原則」を徹底することとなる。

7.公共の安全等に関する情報(第6条第1項第3号エ関係)

 現行条例の「行政上の義務に違反する行為の取締り」を削除し、その他の部分を「人の生命、身体、自由または財産の保護、犯罪の予防その他公共の安全および秩序の維持に支障が生じるおそれのあるもの」に変更する。

【説明】
 現行条例の「行政上の義務に違反する行為の取締り」情報とは、食品衛生法違反事案の処理経過や建築基準法違反事案の調査結果など行政警察に関する事項が該当する。これについては、「事務または事業に関する情報」で対応が可能であり、削除すべきである。
 一方、後段の「その他公共の安全の維持に関する情報」とは、犯罪の予防や捜査等平穏な社会生活を保持することなど司法警察に関する事項が該当する。
 この司法警察に関する事項については、施設等の詳細図面や警備資料あるいは薬物保管届など犯罪の予防情報だけでなく、捜査関係事項照会書と回答書のように発生後の捜査に係る行政情報や違法または不当な行為の通報、告発等に係る情報も含まれる。
 これらの行政情報が公開されることによって、犯罪を誘発するおそれ、または犯罪捜査の遂行に支障を及ぼすおそれ、あるいは違法行為の通報者等が特定され、その結果、これらの人の正常な生活が脅かされるおそれを回避する必要がある。
 そこで、「人の生命、身体、自由または財産の保護、犯罪の予防その他公共の安全および秩序の維持に支障が生じるおそれのあるもの」に変更するのが望ましい。

8.法令秘情報(第6条第1項第4号関係)

 1)法令秘情報は現行条例どおり維持する。
 2)法定受託事務に関する国等の「指示」については、非公開情報として独立した規定を設けない。

【説明】
 地方自治法の改正により、法定受託事務に係る指示で非公開を国等から求められた場合、当区がその指示に従うべきかどうかについて検討をおこなった。
 法定受託事務は、自治事務と同様に、区の事務事業として区の責任で自律的に処理するものとされており、当区がその指示に従うか否かについては選択の余地がある言える。
 したがって、公開請求に対する決定についても、区の裁量を自ら否定する規定を設ける必要はなく、「審議、検討および協議に関する情報」などの非公開情報に該当するかどうか個別具体的にその指示内容を検討し、処理することが適当である。

9.存否応答拒否情報

 存否応答拒否の規定を新たに設ける。

【説明】
 存否応答拒否情報とは、特定個人の病歴、所在の探索あるいは犯罪の内偵など公文書の存否を答えるだけで、非公開情報を公開した場合と同様な結果となる時は、当該公文書の存在を明らかにしないで公開請求を拒否することができる規定である。
 この規定はもともと非公開情報に該当していることが前提であり、非公開の枠を広げるものではない。
 また、この規定を設けている個人情報保護条例との整合を踏まえる必要がある。
 そこで、存否応答拒否ができる規定を新たに設けるべきである。
 なお、存否応答拒否情報は、実施機関にとっては多用される危険が常に付きまとうので、濫用や誤用を防ぐため行政処分に位置づけ、決定にあたっては理由を付記することを義務づけるとともに、不服申立ての対象として取り扱うことが必要である。

7 公開請求および処理手続等

1.部分公開(第6条第2項関係)

 現行条例の部分公開の規定に加え、「個人識別性のない部分の公開」を新たに設ける。

【説明】
 ・電磁的記録への対応
 現行条例の部分公開は紙媒体の公文書を想定した規定となっている。今後新たに、磁気テープやフロッピーディスクなどの電磁的記録が公文書の範囲に含まれると、これに対応したあり方の検討が必要である。
 現在、公文書が記録されている電磁的記録の中には、公開部分と非公開部分の分離が技術的に困難なものや分離が技術的に可能であっても相当の費用がかかるものも含まれている。
 このような場合の対応としては、紙媒体を中心とした現在の文書管理の立場を考慮すると、電磁的記録そのものの視聴や複製物の作成・交付ではなく、従来どおり、紙媒体に出力したものに通常の部分公開のマスキングを施し、閲覧または写しの交付を行う方法もやむを得ない面がある。
 そこで、情報公開法と同様に、「公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において、非公開情報に係る部分を容易に区分して除くことができると認めるとき」とし、部分公開の義務範囲を明確にすることが望ましい。

 ・個人識別性のない部分の公開
 個人情報のうち、氏名など個人識別性のある部分を除けば、公開しても個人の権利利益が侵害されるおそれがないと認められる場合、これまでも、氏名など個人識別性のある部分を除いて公開する運用をおこなっている。
 このような取扱いを、情報公開法と同様に、条例上明記することが必要である。

2.文書不存在の取扱い

 文書不存在の決定を「行政処分」として明確に位置づける。

【説明】
 公開請求に係る公文書が不存在であるときの取扱いについては、解釈運用基準では、審査会の諮問事項とされ、行政処分に該当すると考えられており、不存在を通知する際には、理由付記をおこなっている。
 そこで、現行条例の解釈運用を明確化するため、条例上行政処分として位置づけし、理由付記を義務づけるとともに不服申立ての対象とすべきである。

3.公開請求の手続

 1)公開請求書の基本的記載事項を新たに条例事項とする。
 2)請求書に形式的な不備がある場合、実施機関は補正を求めることができることを明記し、補正に要した日数は諾否決定の法定期間には算入しない。
 3)請求書の受理に関しては、行政手続条例の規定に適合したものに変更する。
 4)電子メールによる請求は、実施の方向で今後の検討課題とする。

【説明】
 ・公開請求書における基本的記載事項の条例化
 現行条例では、公開請求書に記載すべき事項は「住所」「氏名」および「公開請求に係る公文書を特定するための必要な記載」の基本的事項を含め、規則に委ねている。
 しかし、基本的記載事項は公開請求手続の基本となるので、条例事項とすべきである。
 ・補正手続
 補正とは、公開請求書に記載すべき事項に形式上の不備があるときは、請求者に対し、補充訂正を求めることができる手続を言う。
 補正は公文書公開制度を分かりやすく、円滑かつ適正に実施するための重要な手続であることから、新たに条例に明記する。ただし、補正に要した日数は、諾否決定の法定期間に算入しない。
 ・請求書の受理
 練馬区行政手続条例第7条は、「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、・・」と規定し、受理の概念を採用していないので、この規定に適合するように改める。
 ・電子メールによる請求
 情報化の進展や請求者の便宜を考慮すると、電子メールによる請求は必要不可欠となることは十分予想されることである。
 しかし、電子メールによる請求については、情報機器の整備状況やセキュリティ対策などと密接な関連性を持つので、条件整備を前提として、実施の方向で検討課題とすべきである。

5.大量請求への対応(公開決定の期限の特例)

 公開請求に係る公文書が著しく大量であるため、事務の執行に著しい支障が生じるおそれのあるときは、公文書のうち相当の部分につき30日以内(ただし、第三者に対し意見聴取をおこなったときは60日以内)に公開等の決定をし、残りの公文書については、実施機関は、15日以内に、この規定を適用する旨およびその理由、残りの公文書について公開決定等をする期限を、公開請求者に対し通知しなければならないこととする。

【説明】
 各実施機関はそれぞれの行政事務を分担しながら公文書公開請求にも対応しているのが現状である。
 公開請求に係る公文書が著しく大量であるため、期間延長の期限である30日以内(ただし、第三者に対し意見聴取をおこなったときは60日)に公開決定等をするため、他の行政事務をすべて停止して公開請求の処理に専念しなければならないとすれば、他の事務の執行に著しい支障を生じることとなることは理解できる。
 そこで、本来の所掌事務に著しい影響を及ぼすことは避けなければならないため、大量請求への対応(公開決定の期限の特例)を設けるべきである。
 ただし、「著しく大量」、「事務の執行に著しい支障」の概念が不明確であるので、当該規定を適用したときは、審議会にその旨を報告することが望ましい。

6.第三者保護に関する手続(意見書提出の機会の付与等)

 公文書に第三者に関する情報が記載されている場合において、公益上の理由により公開するときは、公開決定に先立ち、当該第三者に意見を書面で提出する機会を保障するなどの事前手続の規定を新たに設ける。

【説明】
 公開請求に係る公文書に、第三者の個人情報や法人等の企業秘密に関する情報が記載されている場合は非公開となるが、そのような情報であっても公益上公開しなければならない場合がある(「6・ 公開・非公開の枠組み等」の「公益上の理由による裁量的公開」、「6・ 個人情報」および「6・ 法人情報」の「公益上の義務的公開」参照)。
 その場合には、適正手続の保障という観点から、不利益を受けるおそれのある第三者に事前に意見書提出の機会を保障するとともに、第三者が公開に反対する意見書を提出した場合においては公開決定をした旨および公開の実施日等を通知する。また、公開決定から公開の実施までに相当の期間(2週間)を置くことにより事後における争訟の機会を確保することが必要である。
 この際、書面により公開反対の意思表示をした第三者が、公開に不服があるときは、公開の実施前に異議申立てと同時に公開の実施を仮停止する「執行停止の申立て」をすることが当然に予想される。このような場合には、異議申立てが不適法なときや執行停止の申立ての利益を越える公開の公益性が認められるときなどを除き、執行停止を認めることとなる。
 したがって一般的には、審査会の答申を尊重し異議申立てに対する決定をおこなうまで公開実施を仮停止することとなる。

7.電磁的記録の公開方法

 電磁的記録の公開方法は、情報化の進展に応じて対応するよう規則等で定める。

【説明】
 電磁的記録の公開方法については、できるだけ請求者の利便に配慮し、紙媒体に出力したものによる公開のほか、電子的な形態で公開が行えるようにすべきである。
 しかしながら、電磁的記録の公開にあたっては、公開に必要な情報機器の整備や、情報の検索、部分公開、電子認証、公文書の原本性の確保(加工の歯止め措置)等、公開のためのシステム開発等準備が不可欠であり、技術上、体制整備上の課題を踏まえ、対応していくことが必要である。
 したがって、情報化の進展を踏まえ、電磁的記録の公開方法については規則等で定めるとともに、順次充実することが適切である。

8.費用の負担(第16条関係)
 1)情報公開制度をより広く利用しやすい制度とするため、請求および閲覧手数料は現行どおり無料とする。
 2)写しの交付および郵送に係る費用については、受益者負担の観点から現行どおり実費相当分の負担を求める。
 3)新しく公文書の対象となった「電磁的記録」の写しの交付については、実費相当分の負担を求める。

【説明】
 公文書の請求および閲覧に要する費用は、特定者に対する個別サービスであることから、受益者負担の考えに基づき手数料を徴収することも可能である。
 しかし、区政情報の提供を含めた情報公開制度は区民参加による公正で透明な区政の実現を図るために必要不可欠なものであり、地方自治の本旨に基づいた区の説明責任を果たすうえでも重要な制度と言える。このことから、公文書に記録された行政情報は区と区民の共有していくべき財産的性格を有するとともに、広く区民に監視・利用されるべき公共的性格が強いものと考える。
 こうしたことから、敢えて手数料を新設することには疑問がある。
 写しの交付等に係る費用については、受益者負担の観点から、「電磁的記録」の写しを含め請求者に実費相当分の負担を求めていくことが妥当である。

8 文書の管理(第17条関係)

1.紙媒体の公文書の検索資料は、現行どおり、「文書収受・発議件名簿」とする。
2.新たに公文書の対象となる電磁的記録については、当面、検索資料として目録を作成し、「文書収受・発議件名簿」に添付するものとする。

【説明】
 情報公開制度が適切に運営されるためには、その前提として、請求の対象となった公文書が適切に管理されていることが大切である。
 今回新たに、電磁的記録を公開請求の対象公文書として位置づけたことにより、その管理のあり方や検索システムなど抜本的に解決すべき課題が多い。
 現在、区では、IT化施策を強力に推進する「電子自治体」の検討を行っている。
 この検討過程の中で総合的に解決すべき課題でもあるので、当面、上記の方法により行うこととする。

9 情報公開の総合的推進(第19条関係)

1.区政に関する「情報公表」および「情報提供」施策を拡充・整備する。
2.「審議会等の附属機関の会議の公開」を新たに規定する。

【説明】
 ・情報公開の総合的推進のための施策の充実・整備
 公文書公開制度は、情報公開制度において極めて重要な機能を果たしているが、請求がない限り公開されないこと、第一義的には請求者にしか公開されないこと、あるいは公文書そのものを公開するので区民には分かりづらいことなどの制約がある。
 現行条例は、この点を補うため、実施機関に対し、情報の公表・提供施策の実施について一般的責務を課しているが、現行の施策はその範囲・量とも十分ではなく、系統的かつ総合的な施策の展開という面でも不足していると言える。
 そこで、情報公開の総合的推進を図るため、情報提供に関する施策の推進、情報公表制度の整備および総合的な情報管理体制の整備等に努める旨の規定を新たに設けるべきである。
 ・附属機関等の会議の公開
 区の施策決定に重要な役割を担っているのが実施機関の審議会や委員会などの附属機関である。附属機関の会議を公開し審議過程の透明性を確保することは、区民の区政参加を促進し、開かれた区政を実現するうえで重要である。
 区では、「附属機関等の会議の公開および区民公募に関する指針」を決定し、本年3月から実施しているが、新たに「附属機関等の会議の公開」を条例に明記し、積極的に推進することが望ましい。

10 出資法人等の情報公開

1.区が出資または財政援助している法人等で区長が指定する団体に対し、練馬区情報公開条例の趣旨に則り、自ら情報公開制度について必要な措置を講ずるよう努める旨の責務を課す規定を設ける。
2.実施機関に対し、出資法人等への適切な指導・助言をおこなう責務を課す規定を設ける。

【説明】
 公正で開かれた区政の実現のためには、区の出資法人や財政援助団体(以下「出資法人等」という。)についても、情報公開を推進していくことが必要である。
 この出資法人等は、区とは別個の独立した法人または団体であり条例制定権の限界などから、条例上実施機関となることは困難であるとされている。
 そこで、出資法人等の設立趣旨や自主性・自律性に配慮しつつ、適切な情報公開が可能となる制度が求められており、出資法人等が自ら情報公開に関し、必要な措置を講ずるよう努めるべき旨の規定を新たに設けることが適切である。
 また、実施機関に対しては、出資法人等への適切な指導・助言をおこなう責務を課す規定を設ける。具体的には、準則を出資法人等に提示し、各出資法人は、それぞれの実情に合わせて情報公開を行うための措置を講ずることになる。
 なお、出資法人等で区長が指定する範囲は、

 ・区の出資割合が1/2以上の法人
 ・区から運営補助を受け、その事業内容が区と代行補完関係にあり、区と極めて密接な関係を有する団体

 のいずれかに該当し、練馬区個人情報保護条例における出資法人等との範囲と整合することが望ましい。

11 他の制度との調整(第20条関係)

 現行条例の「条例の適用除外」の条項を「他の制度との調整」の条項とする。
 そのために、現行条例の「・・・適用しない。」の文言を「・・・公文書の公開をしないものとする。」に変更する。

【説明】
 情報公開条例と公表、閲覧、謄本等の写しの交付を定める個別法令の規定との関係は、趣旨(目的)および手続を異にしているので相互排他的なものとして捉えるのではなく、情報公開条例が原則として並行して適用される。
 例えば、公職選挙法の選挙人登録名簿のように縦覧(閲覧)のみを規定し、写しの交付については法が沈黙している場合には、写しの交付を望む者に対し、情報公開条例を適用し公開することが、公開請求権を広くかつ実質的に保障する観点から、適切と考える。
 このことを推し進めると、他の法令の規定が情報公開条例の公開方法と同一である場合にはこれまでどおり当該法令の規定を優先適用し、公開方法が同一でない場合には情報公開条例を適用することとなる。
 そのため、条文の名称を「他の制度との調整」とし、現行条例の「・・・適用しない。」の文言を、公開方法が同一の場合には「・・・公文書の公開をしないものとする。」の表現に改めるべきである。

12 不服申立て等(第12条関係)

1.実施機関が審査会へ諮問を要しない事項については、現行条例の「当該申立てが明らかに不適法であることを理由に却下するとき」のほか、新たに「実施機関が再度検討を行った結果、非公開決定を取消し、不服申立ての趣旨に即した決定を行った場合」を明記する。
2.実施機関が審査会へ諮問を行った場合には、不服申立人および参加人等に対して、諮問した旨の通知をおこなう義務を明記する。
3.公開決定に関する第三者からの不服申立てを却下・棄却する場合には、第三者の権利を保障するため、「公開の決定日と実施日との間に少なくとも2週間の期間を設ける」ことを明記する。

【説明】
 ・審査会への諮問を要しない事項の追加
 実施機関が不服申立てについて再度検討を行った結果、非公開決定を取消し、不服申立ての趣旨に即した決定を行った場合には、審査会に諮問して審査を行うまでもなく、不服申立人とっては満足する結果が得られることとなる。
 ただし、当該決定等について反対意見書が提出されている場合には、全部公開することは反対意見書を提出したものの利益を害することとなるので、諮問を要するとすべきである。
 これらのことは、不服申立人や反対意見書を提出した第三者の権利利益に直接影響を与える内容であることから新たに条例事項とすることが望ましい。
 ・不服申立人等への諮問の通知
 実施機関から審査会への諮問は、不服申立人、参加人または反対意見書を提出した第三者にとって、審査会への意見陳述、意見書または資料の提出がはじめて可能となる契機である。したがって、不服申立人等にとっては、いつ諮問が行われたかを知ることは重要である。
 そこで、実施機関が審査会に諮問した場合には、不服申立人等への諮問をした旨の通知を義務づけることが必要である。
 ・第三者からの不服申立てを棄却する場合等における手続
 第三者が公開決定の取消しを求めて不服申立てをした場合において、当該不服申立てが却下または棄却されて直ちに公開が実施されると、公開決定に対する取消訴訟を提起する機会を失うこととなる。
 したがって、不服申立てをおこなった第三者の権利を保障するため、情報公開法と同様に、「公開の決定日と実施日との間に少なくとも2週間の期間を設ける」ことが必要である。

第2章 練馬区公文書公開および個人情報保護審査会条例の見直すべき事項

1 審査会の権限等

1.審査会において、請求者には閲覧させず、審査会委員のみが非公開決定等となった公文書を直接見分し、審理を行うこと(インカメラ審理)については、審査会が必要と認めるときは、当該公文書の提示を求めることができる旨を明記する。また、実施機関は審査会の公文書提示要求を拒否することができないことも併せて明記する。
2.審査会が必要と認めるときは、実施機関に対し、非公開決定等となった公文書について、適用する非公開条項、非公開条項に対応する非公開事項、非公開事項に該当する理由等を記載した資料の作成を指示できること(ヴォーン・インデックス手法の採用)を明記する。
3.審査会の権限として、「必要な調査をすることができる」旨の一般的調査権を新たに明記する。

【説明】
 ・インカメラ審理の明記
 インカメラ審理は、審査会の内規に基づき審査会で現に行われている。
 この審理方式は、審査会の適正な判断を担保する上で重要な機能を果たしているので、運用上の措置ではなく、審査会の権限として条例に明記すべきである。
 この場合に、審査会に提出され公文書は、審査会に対し、何人も公開請求ができないこと、また、審査会から提出要求を受けた実施機関は拒否できないことも明記すべきである。
 ・ヴォーン・インデックス手法の採用
 諮問対象公文書が大量で非公開条項および非公開事項が複雑に関係するような事案については、争点を明確にして審理促進を図ることが必要である。
 ヴォーン・インデックス手法は、このような事案の審理を迅速かつ的確に判断を行うための有効な審理方法であり、現に、審査会においても必要により争点を明確にするため、類似の実務を行っている。
 したがって、審査会は、ヴォーン・インデックスの作成についても実施機関に求めることができるように条例に明記すべきである。
 ・審査権限の拡大
 現行条例では、審査会の権限として、意見陳述や説明を求めることおよび資料提出を求めることを規定している。
 しかし今後、不存在の不服申立てにおける審理を考慮すると、関係実施機関の説明を求めるほか、実施調査等の一般的な職権調査権限も必要となる。
 したがって、「必要な調査をすることができる」旨の権限を追加すべきである。

2.審査会委員の守秘義務違反への罰則

審査会権限の強化との均衡および区民の信頼の確保を図るなどの観点から、罰則規定を新たに設ける。
 なお、罰則の量刑については、情報公開法と同等にすべきという意見と罰金刑のみにすべきという意見があり、一定の結論に達しなかった。

【説明】
 現行条例第8条第2項で、審査会委員には守秘義務が課せられている。この守秘義務違反に対して、情報公開法は、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」を規定している。
 見直し後の条例は、インカメラ審理や審査会の調査権等を新たに設けることにより審査会の権限の強化を図ることとなる。したがって、その均衡を保つ必要がある。
 また、審査会は、非公開決定等となった公文書を直接見分し、個人のプライバシーや企業秘密など非公開情報に該当するか否かを審査し、公開決定等の適法性あるいは当・不当について判断することとなるため、審査会への区民の信頼性の確保に十分留意することが大切である。
 以上の観点を考慮すると、罰則規定を新たに設けることが必要である。
 なお、罰則の量刑についても審議を行った。
 その中で、守秘義務違反への効果的な抑止、審査会への区民の信頼の確保あるいは他の法令で規定する守秘義務違反の法定刑との均衡等を考慮すると、情報公開法と同等の法定刑にすべきであるという意見があった。
 しかし一方では、国と区ではその取り扱う情報の内容や性質が異なり、その守秘義務違反行為の影響が大きいこと、高潔で優れた識見を有する者を委嘱していることなどを考慮すると、懲役刑は重く、罰金刑のみにすべきという意見があり、一定の結論に達しなかった。

2 不服申立人等の権利

1.意見の陳述および提出資料の閲覧等

 1)不服申立人等に十分な弁明・反論の機会を与えるため、不服申立人等は審査会に意見陳述の申立てを行い、あるいは意見書または資料を提出することができることを明記する。
 2)審査会は、上記1により意見書等が提出された場合には、不服申立人等にその旨を通知することを明記する。
 3)不服申立人等は、審査会に提出された意見書または資料の閲覧または複写を求めることができることを明記する。

【説明】
 ・意見の陳述、意見書等の提出
 不服申立人等に弁明や反論の機会を保障し、あるいは意見書または資料の提出権を認めることは、不服申立人等の権利利益の保護に資することとなる。また、審査会においても、判断材料がより豊富となり、公正で適正な審査に寄与することとなる。
 したがって、情報公開法と同様に、不服申立人等の意見陳述権と意見書または資料の提出権を条例に明記すべきである。
 ・意見書等が提出された旨の通知
 現在、審査会の内規に基づき、実施機関から非公開理由説明書または反論書が審査会に提出されたときは、その写しを不服申立人に送付し、相当の期間を定めて当該非公開理由説明書等に対する意見を記載した意見書または反論書の提出を求めている。
 しかし今後は、不服申立人等の範囲が拡大し、審査内容も複雑となることが予想されること、また、意見書等の閲覧または複写を不服申立人等の権利として規定することとなる。
 これらのことを勘案し、実施機関等から意見書または資料が提出された場合、審査会は、不服申立人等にその旨を通知する義務を条例に明記することが妥当である。
 ・提出資料の閲覧等
 実施機関等から審査会に提出された意見書等あるいは資料は、不服申立人等の弁明や反論の参考となる場合が少なくなく、そのうえ、審査の公正性を担保するうえでも重要である。
 したがって、審査会に提出された意見書、反論書をはじめ関係資料を含め閲覧または複写を不服申立人等の権利として規定することが必要である。
 なお、審査会は、第三者の利益を害するおそれのあると認めるときその他正当な理由がある場合でなければ、これを拒むことができない旨を併せて規定する。

2.答申書の送付

 審査会が実施機関に答申した場合には、答申書の写しを不服申立人等に送付するとともに、その内容を公表することを明記する。

【説明】
 ・答申書の送付
 審査会が実施機関に答申した場合には、現在、審査会の内規に基づき、速やかに答申書の写しを不服申立人に送付している。
 答申書は、今後、行政訴訟を行うか否かの重要な判断材料である。
 したがって、審査会は、実施機関、不服申立人および参加人に対して、答申書を送付することを条例に明記する。
 ・答申書の公表
 答申内容の公表については、現行条例上規定されていないが、答申書の個人情報が記載されている部分を除き、報告書として「区民情報ひろば」で自由に閲覧できる運用をおこなっている。また、公文書公開条例の規定により「公文書の公開状況の公表」において、年一回、不服申立ての状況および答申内容の概要を公表している。
 審査会としての説明責任の観点および審査手続きの透明性の確保を図る観点から、答申内容の公表について条例に明記する。

お問い合わせ

総務部 情報公開課 情報公開担当係  組織詳細へ
電話:03-5984-4513(直通)  ファクス:03-3557-3721
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