第5項 良好な地域環境をつくる 経済の高度成長期における環境問題は、「公害の克服」が中心課題でした。当時は、ばい煙や自動車による大気汚染、工場や家庭からの排水による河川の汚濁、建設工事や事業所からの騒音・振動などが問題となっていました。その後、燃焼技術の向上や下水道の普及、工事方法の改良などにより、大きく改善されました。 1990年代以降顕在化したアスベストや土壌汚染等は、法整備も進み、改善への取組が着実に行われています。 フロンガスによるオゾン層の破壊、CO₂の排出による地球温暖化、プラスチックの燃焼などで発生するダイオキシン類による環境汚染などについては、国際的な連携のもと対策が進められています。 区では、大気汚染の状況を常時監視するとともに、区立施設において空間放射線量の定期測定などを実施し、生活環境の保全に努めています。 1 大気汚染 ⑴ 大気汚染 大気汚染とは、人の生活や事業活動などによって排出された物質や、大気中での化学反応によって生成された物質により、大気が汚染され、人の健康や生活環境に悪影響を及ぼす状態をいいます。 大気汚染の発生源には、工場・事業場等の固定発生源と自動車等の移動発生源があります。大気汚染の原因となる物質には、窒素酸化物、いおう酸化物、浮遊粒子状物質、微小粒子状物質(PM2.5)、光化学オキシダントおよびベンゼン等の揮発性有機化合物などがあります。 ア 環境基準 環境基準とは、人の健康を保護し、生活環境を良好に保つため、維持することが望ましい基準のことです。これは、環境基本法に定められており、環境基本法制定以前は、公害対策基本法で環境基準が定められていました。 大気汚染の環境基準については、昭和40年代に一酸化炭素や光化学オキシダントなどが、平成21年には微小粒子状物質(PM2.5)が定められました。 【表 大気汚染に係る環境基準】 【表 有害大気汚染物質に係る環境基準】 イ 自動車による大気汚染に対する国および東京都の対策 国および東京都では、自動車が主な発生源である二酸化窒素および浮遊粒子状物質に係る環境基準達成に向け取り組んできました。 国は、平成4年6月に「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」を制定し、窒素酸化物等の排出削減に取り組んできました。東京都はこれに基づき平成16年3月に、二酸化窒素、浮遊粒子状物質に係る環境基準を令和2年度までに達成することを目標とした「東京都自動車排出窒素酸化物及び粒子状物質総量削減計画」を策定しました。 また、自動車公害対策としてディーゼル車の粒子状物質の排出基準を定め、基準を満たさない車両の都内通行禁止などにより、粒子状物質の抑制に努めてきました。現在では、低公害車・低燃費車の普及促進を図るためのハイブリッドトラック導入補助金などを設け、粒子状物質排出量の更なる低減を進めることで、自動車交通に起因する大気環境は改善傾向にあります。 ウ 大気汚染の常時測定 区内の大気汚染の現状を把握するため、東京都環境局が区内の3か所で大気の常時測定を行っています。このほか、区では7か所(一般3か所、沿道4か所:大気汚染測定室配置図のとおり)で大気の常時測定をしています。 なお、自動車排出ガスに含まれる二酸化窒素(NO₂)、浮遊粒子状物質(SPM)は、都内全域で環境基準を長期間継続して達成しており、今後もEV車の増加等により更なる改善が見込まれることから、沿道の3か所(長光寺橋公園、小竹、高松一丁目)の測定室は令和4年度末で監視を終了しました。 【表 大気汚染測定室別測定項目】 【図 大気汚染測定室配置図】 エ 大気汚染常時測定結果   令和7年度の区内の大気汚染物質ごとの状況は、次のとおりです。 【表 光化学オキシダント(Oₓ)、浮遊粒子状物質(SPM)の測定結果】 【表 窒素酸化物(NOₓ)の測定結果】 ⑵ 光化学スモッグ 光化学スモッグの原因となるオゾンなどの光化学オキシダント(酸化性物質)は、自動車や工場から排出される窒素酸化物および揮発性有機化合物(VOC)が、太陽の強い紫外線により化学反応を起こすことで発生します。日差しが強くて気温が高い、風が弱いなどの気象条件によっては、光化学オキシダントが高濃度になり、白くモヤがかかったような状態になることがあります。この状態を光化学スモッグといいます。 光化学スモッグが発生すると、目や喉の粘膜が刺激され、その結果、目がチカチカする、喉が痛む、頭痛がする、息苦しいなどの症状が現れることがあります。 昭和45年に杉並区の高等学校で発生した事例が日本で最初の光化学スモッグ被害です。その後、2例目として大泉中学校(昭和46年)、3例目として石神井南中学校(昭和47年)と、区内での被害が続きました。 光化学スモッグ情報は、「東京都大気汚染緊急時対策実施要綱(オキシダント)」に基づいて発令され、東京都から各区市町村に提供されます。区では、光化学スモッグ注意報、警報、重大緊急報が発令された際、「練馬区光化学スモッグ緊急対策実施要綱」に基づき、防災無線放送塔により区民に情報提供し、注意を喚起しています。また、学校情報が提供された場合は、防災ラジオにより学校等の施設に情報提供を行っています。 【表 発令基準】 【表 光化学スモッグ注意報等の発令日数と被害者数】 ⑶ 悪臭 様々な事業活動に伴い発生する悪臭について、必要な規制を行い、悪臭防止対策を推進することによって生活環境の保全を目指しています。 具体的には、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(以下「環境確保条例」という。)に基づき、工場および指定作業場に関する届出を受けた際に、当該規制基準を満足しているか審査を行っています。また、工場および指定作業場以外の事業活動により発生する悪臭についても、対応しています。 ⑷ ダイオキシン類 ア ダイオキシン類の性質等 ダイオキシン類は、物の燃焼の過程等で自然に生成する物質(副生成物)です。ダイオキシン類対策特別措置法では、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)およびコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)を「ダイオキシン類」と定義し、多数の異性体のうちの29種(PCDD:7種、PCDF:10種、Co-PCB:12種)を毒性があるものとして規定しています。異性体により毒性が異なるため、最も毒性の強い2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの毒性に換算して合計した毒性等量(TEQ)で表します。 (ア) 性状 常温では無色無臭の固体で蒸発しにくく、脂溶性で水には非常に溶けにくい性質を持っています。また、他の化学物質や酸、アルカリとは簡単に反応せず、安定した状態を保つ性質を持っていますが、紫外線で徐々に分解されることがわかっています。 (イ) 毒性 動物実験では、発がん性・肝臓肥大・催奇形性・生殖に及ぼす影響・免疫毒性等が報告されていますが、人への健康に対する明らかな影響はわかっていません。 (ウ) 主な発生源 ダイオキシン類の主な発生源は廃棄物の焼却ですが、様々な産業からも排出されるほか、森林火災や火山活動等でも生じると言われています。 イ 法令による規制 国は、平成9年から平成12年にかけて関係法令を改正するとともに、ダイオキシン類対策特別措置法を制定し、耐容一日摂取量および環境基準のほか、それらを達成するため、ダイオキシン類の主要な発生施設(特定施設)の排出基準を定めて設置者に測定を義務化するなど、規制を強化しました。 a 耐容一日摂取量(TDI) ヒトが生涯にわたって摂取し続けても、人体に有害な影響が現れないと判断される体重1㎏1日当たりの摂取量で、4pg-TEQ/kg体重/日と定めら れています。一時的にこの値を多少超過しても健康を損なわないよう、最も感受性の高いと考えられる胎児期でのばく露による影響を考慮して設定されています。 b 環境基準 耐容一日摂取量(TDI)を常に下回るために設定された環境中の濃度の基準です。 大気:0.6pg-TEQ/㎥以下(年間平均値) 水質:1pg-TEQ/L以下(年間平均値) 土壌:1,000pg-TEQ/g以下(環境基準が達成されている場合であって250pg-TEQ/g以上の場合には、必要な調査を実施すること) ※ 1pg(1ピコグラム)は1兆分の1g 一例として、廃棄物の焼却に関する主な規制事項を以下に示します。 (ア) ダイオキシン類対策特別措置法 火床面積0.5㎡以上または焼却能力50kg/時以上の廃棄物焼却炉(2以上の焼却炉を設置する場合は、当該面積または能力の合計)を設置するときは、「特定施設」として知事への事前の届出のほか、排出ガスの測定結果について報告を義務付けています。 【表 大気排出基準】 (イ) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 廃棄物の焼却は、国が定める処理基準(焼却設備の構造および焼却の方法)に従って行う場合のほか、風俗慣習上または宗教上の行事を行うために必要な場合もしくは農業等を営むためにやむを得ないものとして行われる場合などの例外を除き、禁止されています。 なお、焼却設備は、平成14年12月からその規模に関わらず、燃焼ガスの温度が800℃以上の状態で廃棄物を焼却できる構造としなければなりません。 (ウ) 環境確保条例 東京都では、平成13年4月から環境確保条例を施行し、廃棄物等の焼却行為を制限しています。 a 焼却炉の使用の制限 火床面積0.5㎡未満であって、焼却能力が50kg/時未満の小規模の焼却炉による廃棄物等の焼却は、原則として禁止されています。 なお、火床面積0.5㎡以上または焼却能力が50kg/時以上の焼却炉を有する事業場を設置するときは、「指定作業場」として区長への事前の届出を義務付けています。 b 野外での焼却行為の制限 ドラム缶や一斗缶などを使用し、または地面に穴を掘るなどにより廃棄物等を焼却する行為は禁止されています。ただし、伝統的行事や風俗慣習上の行事のための焼却行為、学校教育や社会教育活動上必要な焼却行為ならびに樹木や農作物の病害虫の防除など農業を営む上で行わざるを得ない焼却行為は例外とされていますが、その場合であっても、周辺の生活環境にできる限り配慮して行う必要があります。 ウ ダイオキシン類の環境調査 (ア) 大気調査 平成11年度から大気中のダイオキシン類調査を3地点(定点)で年4回実施しています。 【表 大気中のダイオキシン類調査結果】 (イ) 土壌調査 東京都では、毎年都内の抽出した地点において、土壌中に含有されるダイオキシン類の濃度調査を実施しています。 【表 土壌中のダイオキシン類の調査結果(東京都実施)】 ⑸ アスベスト ア アスベストとは アスベストは、石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれる天然鉱物繊維で、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの6種類があります。 アスベストは、糸や布として織ることができ(紡織性)、不燃・耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、絶縁性などに優れた性質を有しています。また、安価なため、昭和45年頃から平成2年頃にかけて大量に輸入され、多くは建材として建築物に使用されてきました。 しかし、アスベストの繊維は、微細で軽いため飛散しやすく、吸い込むことでアスベスト肺や肺がん、中皮腫などの原因になることが知られています。 アスベストが使われている建築物の老朽化により、改修・建替工事の増加が見込まれることから、区はアスベストの飛散防止に取り組んでいます。 イ 法令による規制 法令により、アスベストの含有率が0.1%を超える製品等について、様々な規制が行われています。 (ア) 労働安全衛生法・労働安全衛生規則・石綿障害予防規則 アスベスト含有製品等の製造・使用等の禁止およびアスベストの飛散防止対策等を規定しています。また、アスベスト含有吹付け材・保温材等の除去等を伴う解体等工事について、労働基準監督署への事前届出を義務付けています。 (イ) 大気汚染防止法 アスベスト含有吹付け材・保温材等の除去等を伴う解体等工事について、区長への事前届出を義務付けています。令和3年4月から、規制の対象がアスベストを含有する全ての建材に拡大されました。 (ウ) 建築基準法 建築物の増改築時および大規模な修繕・模様替え時において、吹付けアスベストおよびアスベスト含有吹付けロックウールの除去等を義務付けています。 (エ) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 アスベスト含有廃棄物について、適正な処理を義務付けています。 (オ) 環境確保条例 アスベスト含有吹付け材・保温材等の除去等を伴う一定規模以上の解体等工事について、区長への事前届出およびアスベストの飛散防止対策等を義務付けています。 (カ) 練馬区アスベスト飛散防止条例 大気汚染防止法が令和3年3月まで規制対象としていなかったアスベスト含有成形板等の除去等を伴う解体等工事についても、規制対象としてきました。また、露出したアスベスト含有吹付け材が存在する一定規模以上の集客施設等に対し、除去・囲い込み等の措置を義務付けています。 法改正に合わせて条例を改正し、令和4年4月から、アスベスト含有建材の除去等を伴う一定規模以上の解体等工事において、従来の届出に代え、近隣から見やすい場所に工事情報を記載した標識を設置したことを区長へ報告するよう義務付けています。 【表 アスベスト含有建材の除去等作業に係る届出等の件数】 ウ 民間建築物のアスベスト対策への支援 (ア) アスベスト調査費用の助成 平成17年10月から、区内の民間建築物に使用されている吹付け材について、アスベスト含有の有無等を確認するための調査等を行う費用の一部を助成しています。 (イ) アスベスト含有吹付け材除去工事費用の助成 平成19年4月から、区内の民間建築物の増改修などに伴うアスベスト含有吹付け材等の除去工事費用の一部を助成しています。 【表 アスベストの調査費用および除去工事費用の助成 】 【表 アスベストの調査費用および除去工事費用の助成件数】 エ アスベストの環境調査 平成18年度から、大気中のアスベスト濃度を4地点(定点)で年4回調査しています。(平成23年度からは総繊維数(アスベストに限らない繊維状物質の総数)濃度を測定) なお、アスベストについて、環境基準は定められていません。 【表 環境大気中のアスベスト調査結果】 2 放射線対策 区内の状況の把握 平成23年6月から空間放射線量の測定を開始し、現在年4回測定を行っています。 測定は区内を半径1.5kmの円で12地区に区分し、各地区1か所の区立施設(計12か所)で継続的に実施しています。区の対応基準値は、国際基準で定める一般公衆放射線量限度「年間1ミリシーベルト」をもとに、毎時0.24※マイクロシーベルトと定めています。 【表 空間放射線量測定結果】 3 騒音・振動 ⑴ 騒音・振動の状況 ア 騒音とは 私たちは、自然界の音や人々の活動によって生じるさまざまな音に囲まれて生活しています。このうち、一般に大きな音や不快な音など好ましくない音を「騒音」といいます。 しかし、音の感じ方は、人によって異なります。また、周囲の環境や時間帯によっても変わります。音楽や宣伝放送のように、必要とする人にとっては有用な音であっても、他の人には騒音と感じられる場合があります。 イ 振動とは 振動とは、工場や作業場の機械の稼働、建設工事による大型建設機械の使用、車両の通行等によって、建物や地面が揺れる現象をいいます。大きな振動の場合、建物などに被害を及ぼすほか、人の生活に支障を来すことがあります。 ウ 騒音・振動の大きさ (ア) 騒音の単位(デシベル) 音の大きさは「騒音(音圧)レベル」で表され、単位はdB(デシベル)を用います。また、音の高低は1秒間の空気の振動数=周波数で表わし、単位はHz(ヘルツ)を用います。人が聞くことのできる音の範囲(可聴帯域)は概ね20Hz~20kHzとされており、特に4kHz付近の音を感じ取りやすいとされています。そのため、音圧レベルが同じでも、周波数の違いによって音の大きさの感じ方が異なることがあります。 【表 音の大きさのめやす】 (イ) 振動の単位(デシベル) 振動の大きさは「振動レベル」で表され、単位はdB(デシベル)を用います。 【表 振動の大きさのめやす】 (ウ) 数字の比較 騒音や振動の単位であるデシベルは、対数を用いてエネルギー比を表現したものです。例えば3dB増加するとエネルギーは約2倍、10dBの増加で約10倍になります。このため、騒音や振動を低減するには、そのエネルギーを大幅に減らす必要があります。例えば、騒音や振動を10dB低減するためには、エネルギーをおおむね10分の1まで減らさなければなりません。 ⑵ 騒音の環境基準 騒音についての環境基準は、次表のとおりです。振動についての環境基準は、設定されていません。 【表 騒音に係る環境基準】 【表 幹線交通を担う道路に近接する空間における環境基準】 ⑶ 発生源別の状況と対策 ア 工場・作業場等 区内は大半が住居系地域であり、大規模な工場は少ない一方、中小規模の工場や作業場が住宅地に多く混在しています。このため、工場等の周囲に隣接して住宅などがある場合には、騒音・振動の問題が発生することがあります。 区では、騒音規制法・振動規制法に基づく特定施設の届出、環境確保条例に基づく工場の認可申請や指定作業場の届出などを通じて、騒音・振動公害の未然防止に努めています。 イ 建設工事や土木工事 区内では、建物の建設や解体が数多く行われています。これらの工事では、大型建設機械の使用などにより、騒音・振動が発生し、近隣とトラブルになることがあります。 建設工事や土木工事のうち、特定の建設機械(くい打機やさく岩機など)を使用する作業は、騒音規制法・振動規制法・環境確保条例により、規制対象となっています。区では事前届出などの際に、工事内容を確認するとともに、事業者に対して防音・防振対策の徹底を指導しています。 ウ 自動車 自動車走行による騒音・振動は、交通量の増加や高速走行、大型車の走行などにより大きくなります。このため、区内の幹線交通を担う道路の沿道住民は、走行音や振動の影響を受けることがあります。 騒音規制法に基づき、自動車騒音常時監視を毎年1回行い、測定結果(37ページのとおり)を環境省と東京都環境局へ報告しています。 エ 鉄道 区内には西武池袋線、西武豊島線、西武新宿線、東武東上線のように地上を走る鉄道と、西武有楽町線、東京メトロ有楽町線、東京メトロ副都心線、都営地下鉄大江戸線のように地下を走る鉄道があります。鉄道は、公共大量輸送機関として都市生活には欠かせないものです。一方、鉄道沿線では、騒音や振動が周辺の生活環境に影響を及ぼすことがあります。 騒音対策については、遮音壁の設置、つなぎ目の少ないロングレールへの改良などが行われています。振動対策については、振動を吸収するためのバラストマットの使用、建設構造体の重量増や基礎を岩盤で支持するなどが行われています。 オ 航空機 (ア) 航空機騒音 航空機から発生する騒音は非常に大きく、空港・飛行場周辺では被害を受けやすくなっています。従前から区の上空を定期飛行している航空機は、高度10,000フィート以上であり、大きな被害は発生していませんが、低空飛行するヘリコプターなどが飛来することで苦情となる場合があります。 (イ) 羽田空港機能強化 国は、羽田空港国際便の航空需要に対応するため、発着枠の増加が可能となる新飛行経路の運用を令和2年3月29日から開始しました。新飛行経路は、南風時の15時~19時の間に区の上空(3,000~4,500フィート)を通過することから、区は、国に対して、落下物、騒音対策を確実に実施し、今後も更なる対策の強化に努めること、引き続き丁寧な情報提供に努めることを求めています。 新飛行経路の運用開始後は、定期的に開催される都の「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」において、騒音の発生状況や運行便数など情報共有を図るとともに、必要な要請を行っています。騒音の発生状況や当該連絡会の開催状況については、国や都のホームページでそれぞれ公表しています。 カ 近隣騒音 日常の生活行動や家庭に普及している家電、音響機器などから発生する、いわゆる生活騒音は、人が活動することに伴って発生するものです。そのため、これを法律や条例で規制することは日常生活に制限を加えることになり、一律的な規制になじみにくいものといえます。 住民、行政、住宅建設業者、機器や設備等の製造業者などの関係者がそれぞれの立場から騒音とならないよう努力することが大切です。 区では、実際に発生している近隣騒音問題の解決に向け、騒音計の貸出や近隣騒音防止に関するパンフレットの配布等を行っています。 ⑷ 夜間騒音等実態調査 飲食店等の深夜営業に伴うカラオケ騒音など、夜間に発生する騒音は睡眠の妨げとなるなど、周辺の人々にとっては深刻な悩みとなります。区では、夜間の騒音等に関する苦情や相談について現状を把握し、問題の早期解決を図るため、実態調査を行っています。 【表 夜間騒音等実態調査結果】 令和7年度は6回、延べ23か所の事業所等を調査しました。 ⑸ 特定建設作業 騒音規制法および振動規制法では、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音または振動が発生する作業として、くい打ち機、さく岩機、空気圧縮機などを使用する作業を特定建設作業と定め、作業開始の7日前までに区長へ届け出るよう義務付けています。 令和7年度の届出件数は次表のとおりです。 【表 特定建設作業実施届出件数(作業別合計)】 【表 特定建設作業実施届出件数(工事別合計)】 ⑹ 自動車騒音対策 自動車騒音常時監視は、平成10年の騒音規制法改正時に新設され、東京都が平成12年度から実施してきました。平成15年度に区へ事務が移譲されました。 ア 面的評価 自動車騒音常時監視の環境基準達成状況を評価するための方法として、現在、面的評価が用いられています。これは道路に面する地域の個別の住居等が受ける騒音レベルを環境基準と比較して、その達成度合いを戸数および割合で評価するものです。 イ 評価範囲 面的評価は「幹線交通を担う道路」すべてを対象とします。対象となる範囲は、対象道路と住居等との境界(道路端)から50mまでです。 【図 評価範囲図】 ウ 評価対象の音 評価対象の音は、対象道路から発せられる道路交通騒音に限定します。対象道路に接続する側道や対象道路と平行する裏道の道路交通騒音は含みません。その他、建設作業騒音、鳥や虫の声、救急車、パトカーなどのサイレンも含みません。そのため、実測地点において対象外の音が発生した場合は、除外音として処理します。 エ 評価の方法 同一の道路であっても、場所によって騒音レベルは異なるため、道路交通騒音の影響が概ね一定とみなせる区間ごとに評価します。道路交通騒音の影響が概ね一定とみなせる区間は、国土交通省の一般交通量調査の区間としています。対象道路の総延長は、およそ90kmです。 評価は、交通条件(交通量・大型車混入率・車速)および騒音の実測値を用いた計算で行います。なお、騒音の実測を行っていない道路でも、道路騒音の状況が過去を含む他の測定値と同等と見なせる箇所は、推計することで評価しています。 調査は、対象道路を5年間で一巡するスケジュールで行います。令和7年度は騒音の実測を10区間で行いました。 【図 練馬区内における対象道路図】 オ 騒音測定結果 実測による測定結果(過年度含む)は次表のとおりです。 【表 基準点騒音測定結果】 カ 面的評価の結果 環境基準達成率は概ね横ばいで推移しています。近接空間の夜間環境基準達成率は85%以上となっており、その他は95%以上で推移しています。 【表 近接空間における面的評価結果】 【表 非近接空間における面的評価結果】 4 工場・指定作業場等 工場等の事業者には、公害を未然に防止するため、環境確保条例や騒音規制法・振動規制法などの関係法令により、義務や規制事項が定められています。 ⑴ 工場の設置 ア 工場とは 環境確保条例における工場は、以下のとおりです。 (ア) 定格出力の合計が2.2kW以上の原動機を使用する物品の製造、加工または作業を常時行う工場 (イ) 定格出力の合計が0.75kW以上2.2kW未満の原動機を使用する裁縫、印刷、金属の打ち抜き等を常時行う工場 (ウ) 塗料の吹付け、金属の鍛造、インクまたは絵の具の製造、紙またはパルプの製造、写真の現像等を常時行う工場 イ 工場認可制度と工場に対する規制 環境確保条例では、これらの工場を設置または変更する場合には、あらかじめ区長の認可を受けることを義務付けています。これらの認可制度は、工場が大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下、悪臭などの公害発生源になりやすいため、事前に審査・指導を行い、公害を未然に防止することを目的とするものです。 また、工場設置者に対して、規制基準、燃料規制、設備構造基準の遵守義務および位置の制限などを課し、違反に対する改善命令、操業停止命令等を定めています。 【図 工場設置・変更認可手続の流れ】 【表 認可工場業種別分類】 ⑵ 指定作業場の設置 ア 指定作業場とは 環境確保条例では、工場以外の事業場で公害の発生のおそれのある自動車駐車場(収容台数20台以上)、ガソリンスタンド、洗濯施設やボイラーを有する事業場など32種類を指定作業場と定め、工場に準じた規制を行っています。 イ 指定作業場の届出と規制 環境確保条例では、これらの事業場を設置または変更する場合には、工事開始の30日前までに区長への届出を義務付けており、公害の未然防止を図っています。 【表 指定作業場業種別分類】 ⑶ 特定施設の設置 騒音規制法および振動規制法では、工場または事業場に設置される施設のうち、著しい騒音または振動を発生する施設で政令で定めるものを特定施設とし、工事開始の30日前までに区長への届出を義務付けています。 【表 騒音規制法による特定施設種類別分類】 ⑷ 事業者等のその他の責務 ア 化学物質の適正管理 現代社会においては、生活の身近なところに多種多様な化学物質が使われています。化学物質の中には、人の健康に支障を来すものが多くあり、扱い方が適切でないと、環境汚染や生態系への悪影響を及ぼすおそれがあります。 そのため、化学物質を取り扱う事業者は、その使用量や環境への排出量等を正確に把握し、適切に管理、使用する必要があります。 東京都では、事業者による化学物質の適正な管理を義務付ける規定を環境確保条例に盛り込み、平成13年10月から施行しています。条例では、有害性が認められる59種類の化学物質を対象として、いずれかの物質を年間100㎏以上取り扱う工場・指定作業場の設置者に対し、前年度の使用量や環境への排出量を区長へ報告(「適正管理化学物質の使用量等報告書」を提出)することを義務付けています。 令和7年度は、区内の塗装工場、印刷工場、めっき工場、クリーニング店、ガソリンスタンド等45事業所から報告書が提出されました。 また、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)では、対象とする業種のうち、対象化学物質(第一種指定化学物質515種類、うち特定第一種指定化学物質23種類)を年間で一定量以上取り扱い、または特定の施設を設置している事業者は、前年度における化学物質の環境への排出量等を東京都へ届け出ることになっています。 イ 土壌汚染に関する規制 有害な化学物質による土壌・地下水の汚染が人の健康に支障を来すことを防止するため、環境確保条例では平成13年10月から土壌汚染に関する規制をしています。特定有害物質26種類のうち1種類でも使用履歴がある工場・指定作業場は、廃止等の際に土壌汚染状況を調査し、結果等を区長へ届け出なければなりません。 令和7年度は、土壌汚染状況調査報告書等の届出が17件ありました。また、3,000㎡以上の土地の改変等を行う場合には、土地の履歴を調査し、土壌汚染の可能性がある場合には調査を行い、東京都へ結果を届け出る必要があります。 平成15年に土壌汚染対策法が施行され、水質汚濁防止法・下水道法における有害物質使用特定施設の廃止の際には、土地の所有者は土壌汚染の状況を調査し、東京都へ結果を届け出ることが必要になりました。また、土壌汚染状況調査の結果、土壌の汚染状態が基準に適合しない土地については、要措置区域または形質変更時要届出区域として指定され、公表されます。区内では令和8年3月31日現在、要措置区域3か所、形質変更時要届出区域3か所が指定されています。 環境確保条例で定める汚染土壌処理基準を超えた場合、または土壌汚染対策法で定める指定基準を超えた場合、汚染の除去や拡散防止措置等を行わなければなりません。 なお、区では不動産流通業者等に対して、工場・指定作業場等の情報提供を行っています。 【表 工場・指定作業場等の情報提供件数】 5 苦情・相談 ⑴ 苦情・相談の受付から処理までの手順 【図 苦情・相談の受付から処理までの手順】 ⑵ 苦情受付実績 【表 発生源別・現象別用途地域別苦情受付件数(令和7年度)】 【表 過去5年間の発生源別・現象別苦情受付件数】